読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
~これでも仕事用です~

エノケン映画鑑賞記1「エノケンの青春醉虎傳」

f:id:gumiyoshinobu:20150725143758j:image

今回からエノケン映画レビューに入ります。とりあえず現状観れる、戦前に作られたエノケン映画は一通り観たんで。
まずは現代(もちろん製作当時の)を舞台にした5本(正続編があるので4回分)から。
最初は主演第1作である「エノケンの青春醉虎傳」からです。(ただしタイトルクレジットは「エノケン主演 青春醉虎傳」になっている)

音楽喜劇映画を撮るために、松竹専属ながらライバル会社といえる東宝系列のP.C.L.と契約したエノケンですが(この辺の経緯はいろいろあるけど割愛)、まずは当時外国のシネミュージカルでよくあったカレッジ物を題材に選びますが、これは舞台で「民謡六大学」などカレッジ物を演じていたこともあるでしょう。
ただ、どうもエノケンの個性とカレッジ物(途中からサラリーマン物)という題材が噛み合っているとは思えない。

巻頭、ウルトラ警備隊みたいな格好でエノケン二村定一他が歌いながら現れて笑っちゃうのですが(上の画像参照)、これは違和感の笑いであって作り手側の狙いとは関係ない笑いです。(どうもウルトラ警備隊みたいな服はカレッジユニホームらしい)
いきなり答えを書くみたいですが、結局最後まで「違和感の笑い」がいくつかあるだけで、はっきりいって面白くもなんともない映画です。
何つーか、本邦初の本格的音楽喜劇(そういうことにしておく)ということもあって、とにかく手探り感がハンパないんです。つまりすべてにおいて「こなれて」いない。
キャメラワークから音楽の挿入の仕方まで、え?そんな感じにするの?みたいな違和感が凄い。話もとりとめがないし、とりとめのなさが面白さにつながっていない。
古川ロッパ昭和日記」の中でロッパも賞賛したクライマックスの大乱闘シーンも、さすがに今観るとツラい。こちとら当然ああいうの、いやさらにレベルが高いジャッキー・チェンを子供の頃からさんざっぱら観てるから。

そんなつまらない主演第1作ですが「エノケンのやりたかったこと」はこの作品を見れば痛いほどわかります。
笑いがあって、音楽とドラマが乖離してなくて、アッと言わせるアクションまで入った、モダンな総合エンターテインメント映画。今でいえばインド映画みたいな感じを目指してたんじゃないかと。(インド映画はモダンどころか超土着だけど)
だからか、なんといえばいいのか、つまらないんだけど、妙に後に引くんです。初めての主演作ということでこの作品に賭けたエノケンの意気込みみたいなものが印象を強烈にしているってことはあるんじゃないかと。
何度も書くけど、全然面白くない。でもね、下手したらエノケン映画の中で一番好きな作品かもしれない。エノケンの意気込みだけじゃなしにね、何だか、どうも、愛おしい映画なのです。
理由?んなもんありませんよ。みなさんも後付けの屁理屈なんか読みたくないでしょうし。「全然面白くないけど愛おしい映画」があってもいいじゃありませんか、ね?

さて、この作品の準ヒロイン的な役どころとして堤眞佐子という女優が出てるんですが、これがどうにもチャーミングなんです。(上の画像のエノケンの隣が堤眞佐子です)
彼女は当時のP.C.L.を代表する女優だったようで、エノケンの主演第2作「エノケンの魔術師」にも出てくるし、ワタシは未見ですが東宝映画になってからも数本の映画で主演格で出ています。

わりと人気も持続したようで「青春醉虎傳」から約5年後、つまり1939年ですね、この年の1月に発行された「東宝映画」というPR誌に「東宝新春漫華曲」という当時の東宝スタァの似顔絵モブ(絵・可東みの助)が載ってて、堤眞佐子が入っていることから見ても依然スタァ格だったってのはわかります。
なんだけど、画像がないのが非常に残念なのですが、この似顔絵ってのが世にも醜く描いてあって笑ってしまいました。(しつこいけど、この絵が載ったのはPR誌ですよ)
実物もね、さすがに醜女ではないけど、まったく美人じゃないし、丸顔で鼻の丸い、後の言葉でいえばファニーフェイスなんですが(ファニーフェイスといえば後年の団令子が有名だけど、団令子の方がまだ美人)、妙にモダンな感じなんですね。

演技も何だかヘンテコなんだけど(「古川ロッパ昭和日記」にも「堤真佐子の例のオーバーな芸」(昭和14年2月15日付)なんて文言が出てくるし)、ベレー帽にスカーフを巻いて登場し、終盤にはサングラス(大きめのサングラスでこれも妙に今っぽい)までする「青春醉虎傳」は堤眞佐子のチャーミングさを堪能する最適な作品かもしれません。

広告を非表示にする