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~これでも仕事用です~

エノケン映画鑑賞記4「エノケンの頑張り戰術」

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今回は、現存するエノケン映画での最高傑作といわれる「エノケンの頑張り戰術(頑張り戦術)」なのですが。

戦後は「お化け映画の巨匠」といわれることになる中川信夫ですが、戦前の東宝在籍時はずいぶんエノケン映画の監督もつとめています。
「ホラーとギャグは紙一重」といいますが、中川信夫もまた、喜劇映画を撮る才能があったとみるべきでしょう。(ただし中川信夫自身はそこまでエノケンの能力を買ってなかったみたいですが)
「頑張り戰術」は如何にも小品って感じで、レビューシーンもないし、歌うシーン自体も少ない。(二村定一がいなくなった、どうもこの前にエノケンと大喧嘩をしてエノケン劇団を離脱したらしい、のが大きいんだろうけど)
クレージーキャッツファンにとってこの作品がお馴染みなのは、植木等谷啓主演の「クレージーだよ・天下無敵」の元ネタだからで、植木等谷啓が張り合ったように、エノケンと如月寛多が徹底的に張り合うってのが「売り」です。
その張り合いってのが時代を考慮すればかなりハードで、とくに按摩(←これも言っちゃダメなのか?)に扮したエノケンと、それに気づかない如月寛多の取っ組み合いは下手なプロレスより迫力があり、どこまで本気がわからないレベルでやり合ってる。
しかし、実はこの映画の本質は「張り合い」ではなく「バカンス物」なんです。バカンス物というベースがあって、それに張り合いからくるギャグが乗っかってる感じで。
戦前のエノケン映画では貴重な欠落のない完全版なので、変な破綻はないし、ま、逆にいえば、こちらも遠慮なく書けます。

正直にいいましょう。これが最高傑作といわれているのは、かなり寂しい。
やっぱりね、ギャグに関してはかなり手心を加えて観てやらないといけないんです。温泉卵のギャグだって、もし「ドリフ大爆笑」のコントの一編だったら、駄作に入ると思う。
エノケン映画はレビュー要素が強いから、まだ観てられるってのも多分にあるんです。レビューシーンは仮に手心を加えなくても歴史的価値で観てられる。でもギャグに歴史的価値はない。いやワタシは基本的に認めない。
それでもです。少なくとも「サムく」はないのです。
ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓」同様のキ◯ガイオチとか、今のモラルからいえば「うわーっ」だけど、まァ、サムくはない。

最高傑作云々といわれると疑問符は浮かぶとはいえ、ワタシはもう、それだけで大したもんだと思うのですよ。
「頑張り戰術」からインスピレーションを受け33年後に作られた「クレージーだよ・天下無敵」も似たようなもんで、別に笑えるわけじゃないんだよね。いや、サムくなさだけでいえば「頑張り戰術」の方がサムくないかもしれない。
先に挙げたエノケンと如月寛多の取っ組み合いシーンでも、面白い面白くないはおいといて、とにかく徹底感があるんです。それに比べて「クレージーだよ・天下無敵」はすべてが中途半端。それこそクライマックスで「女はそれを我慢できない」を意識したようなショウシーンがあったりしてね。だったらいっそ「頑張り戰術」のリメイクでよかったのに、と。
ま、さすがに防弾チョッキ会社ってのは変えないとマズいけどさ。

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