~これでも仕事用です~

特撮博物館と成田亨

f:id:gumiyoshinobu:20151014161239j:image

以前、ワタシどもの作品である「Gumi-chan1961」は人形とジオラマの組み合わせではなく、人形とセットである、と書きました。
そして同時に、2012年に東京都現代美術館で行われた「特撮博物館」に多大な影響を受けたとも書いた。道しるべ、といえば大仰ですが、とにかく「何をどうすればいいのか」にかんして、特撮博物館に行ったことで感覚が一発で掴めたんですね。

ワタシは元来、特撮にはあまり興味がない人間です。だから、世代的には少し上になるけど「ウルトラマン」などの、いわゆる円谷特撮の作品も、見てたことは見てたけど、大人になって深く考察したことなど一度もありません。
というか、もっというなら、特撮アクションの面白さについてまったく本質をわかっていない。
興味がないからわからない。わからないからなお一層興味を持てない。このスパイラルです。

でもそのことにたいして、別段何とも思ってない。他に興味があること、本ブログのテーマでもある戦前モダニズムとかね、そういうのが結構あるから、そこまで手を広げるつもりもなかった。何しろたいして興味がないんだから。
ところが「Gumi-chan1961」を作っていくにあたって、それでは済まなくなってきたのです。依然として興味は薄いけど、それなりに調べないと、これは話にならないな、と。
特撮博物館に行ってわかったのはそういうことです。

特撮博物館で驚いたのは、とにかく全然精密じゃないんですね。いや、別の意味で精密なんだけどそれは後述するとして、今あるジオラマと呼ばれているものに比べたら、かなり大雑把です。
いずれ書きますが、たとえば「マツコ有吉の怒り新党」でも取り上げられた荒木智さんの作品なんか、精密を通り越した惚れ惚れしてしまう世界観があるのですが、特撮のセットはぜんぜんそういうんじゃない。

セットからは外れるけど、合成用の空を飛ぶウルトラマンなんか、ま、たしかにウルトラマンといえばウルトラマンだけどさ、くらいの感じで、まるで古谷敏(ウルトラマンスーツアクター)が中に入ってるんじゃないか、みたいなもんではまったくない。
でも映像で見れば、もうウルトラマンでしかないわけでね。

もう冷静に考えれば当たり前すぎるくらい当たり前なんだけど、特撮セットはあくまで「レンズありき」なんです。いやもう、レンズの位置が決まらなければ特撮セットなんか作りようがないんじゃないかとすら思う。
とにかく、レンズを通して見える世界がすべて。逆にいえば、レンズの角度的に入らない箇所は一切作っていない。普通にベニア剥き出しだったりする。
その辺の割り切りなんですよね。

これも当たり前だけど、レンズと人間の眼は違います。人間の眼で見てリアルである必要はないわけで、レンズを通した時にリアルに写るように作る。
ま、特に怪獣映画なんかそうですが、劇中で壊すのが前提なので、余計なところまで作ってたら、いくら予算があっても足りないですわな。

では実際に特撮セットをどのように作っているか、です。
そこで出てくるのが「成田亨の特撮美術」という本。どうも20年ほど前に発売されてたものらしいけど、ワタシは存在を知らなかった。ところが今年に入って増補の上で復刊されて、手軽に読めるようになったというわけです。(手軽、というにはちょっと値が張るけど)
ありがたいことに、この本には特撮のイロハがすべて書いてある。ワタシどものように特撮セットから学ぼうという者たちには非常にありがたい本なのです。

成田亨といえばウルトラマンのデザインで有名ですが、数々の特撮映画で美術を担当したことでも知られており、本の内容もあくまで実践に則したものになっている。
特撮の神様といわれた円谷英二は早逝したため、この手の技巧だけに絞った本を残してないですからね(たぶん。もしあったらごめんなさい)。だから成田亨のこの本は貴重なのです。
(円谷なき後の東宝特撮を支えた中野昭慶もインタビュー本を出してて、これは特撮に興味がない人間にも本当に面白いんだけど、特撮の解説ではなく自作を語る、みたいな内容だから)

大抵特撮関係の書籍ってのはマニア向けで、それはそれだけマニアがいるからなんだけど、もっと実践的な本があってもいいと思う。
そうはいっても特撮セットってなかなか個人で作れるもんじゃないからね。難しいのは百も承知なんだけど。
広告を非表示にする