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~これでも仕事用です~

1963年のメリークリスマス

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来週はいよいよクリスマスです。
そこで今回はクリスマスに関係したことを書いていきます。

あれは2007年のことでした。アカオカズミが住む神奈川県藤沢市の人たちにグミちゃんを見てもらいたい、という意向から、小さい個展をやったことがあります。
題して「1961年のメリークリスマス」。12月に開催したのでこのタイトルになったのですが、ではピンポイントで1961年のクリスマスがどういったものだったのか、これが結構わからない。

クリスマスを祝うという習慣は、ごく一部とはいえ戦前からあったもので、大都市部ではクリスチャン云々関係なく、クリスマスパーティーが開かれていたようです。(「古川ロッパ昭和日記」を読むと、1934年の時点ですでに『銀座の伊東屋へ行き、クリスマスプレゼントを買ひ』という文言が出てくる)
ましてや1961年といえば終戦から16年も経っているわけで、今のクリスマスとそこまで変わらなかったというのは、何となくわかる。当時の新聞のデパートの広告を見ても、当たり前のようにクリスマスセールをやっていることがうかがえます。

ところが2年後の1963年になると、ああ、クリスマスとはこんな感じのイベントだったんだってのが「肌感覚で」わかるのです。
何故わかるのかって?それは当時の日本では非常に珍しいコンセプトアルバムのレコードが発売されたからです。
タイトルは「メリーメリークリスマス」。ザ・ピーナッツをはじめとする渡辺プロダクションのタレントが、クリスマス関連のソングをカバーしたものを集めたアルバムです。

が、この中に一曲だけオリジナルソングが入っている。楽曲のタイトルが「クレイジーのクリスマス」。タイトルでわかる通り、ハナ肇とクレージーキャッツ(以下クレージー)によるものです。
楽曲、とは書きましたが、これはコントと歌とクレージー自身による演奏(「ジングルベル」)をひとつのパッケージに収めたもので、白眉なのが青島幸男作詞、萩原哲晶作編曲(あまりにも間違いが多いので指摘しておきますが、「はぎわら・ひろあき」と読みます。間違っても「おぎわら・てっしょう」ではありません)という「スーダラ節」や「無責任一代男」などを手がけた黄金コンビによるオリジナルソング「クレイジーのクリスマス」です。(ややこしいけど、全部のタイトルもオリジナルソングのみのタイトルも同じく「クレイジーのクリスマス」です)

どうも完全な一発録りだったらしく、ハナ肇はメロディーを間違えてるし、コーラス部分で半分が「特別サービス」、半分が「出血サービス」と歌うなど混乱した部分も多く、けして完成度の高い楽曲ではありません。
だから最初はね、ああ、いつものクレージーソングだなって感じだったんだけど、2012年、ロンドンでクリスマスホリデーを過ごしてみて、この認識が変わってしまいました。

青島幸男がクレージーに提供した歌詞ってね、諷刺精神が旺盛なんだけど、けして一方通行じゃないんです。
流行りだったり風潮にたいして、わりと極端な逆説を持ち出すんだけど、でも流行りや風潮に「それでいいんじゃねぇか」と肯定してしまう。どっちが正しいじゃなくて、オレはこう思うってところだけビシッと抽出している。それが凄い。

「クレイジーのクリスマス」で揶揄したのはクリスマスそのものではなく、日本におけるクリスマス風景です。さっき書いたように、クリスチャン云々関係なく、ケーキ食って酒飲んで馬鹿騒ぎする、あの日本のクリスマスの風景。
そこで青島幸男は、まったく堅苦しくない表現で「アチラのクリスマス風景」を提示する。それが「英語で忘年会」だったり「大売り出しの日」だったり「西洋のお正月」だったりするんだけど、これがもう、実際にロンドンでクリスマスを体験してみると、何ひとつ間違ってないことに驚かされました。

他の欧米諸国は知りませんが、少なくともロンドンではクリスマスとは日本でいえば正月以外の何物でもなく、店はほぼ全部休みだし、鉄道すら動いていない。
またどうも新年を祝うという習慣もないようで、さすがに元旦は休みのところが多いけど、1月2日からは何の変わりもない日常が始まります。
この時点でただの一度も海外に行ったことがなかったはずの青島幸男の慧眼には本当に恐れ入ります。

フシギなもので、青島幸男がパロディーというか揶揄してくれたおかげで、揶揄された側、つまり「クリスマスというイベントにかこつけて、単に馬鹿騒ぎする」当時(1963年)の日本のクリスマス風景が手に取るようにわかってしまう。
いや、今も同じですよね。何も変わっちゃいない。ま、今は「恋人たちのイベント」みたいなのが付加されてますがね。

最後にひとつだけ。ロンドンの人はクリスマスにチキンは食べません。「え!?日本ではクリスマスにチキンを食べるのかい?」と驚かれるレベルです。チキンは後ろに動くのであまり縁起がよろしくないらしい。だから、ロンドンにも至るところにケンタッキーはありますが、クリスマスも別段いつもと変わりません。

あ、あとひとつ。どうもね、七面鳥=ターキーとトルコ(アチラ流の発音だとターキーになる)の言い分けが難しい。だからトルコ人に「昨日はクリスマスだからターキーを食った」っていうのが難しいのなんの。作り話っぽいけど、これ、本当にあった話です。
もしこれが、水の江瀧子がトルコで七面鳥を食べた、となったら、マジで関西人がその犬はチャウチャウではないよ、と否定する時並みになるな。
さすがに話が逸れ過ぎたのでこの辺で。
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