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~これでも仕事用です~

エノケン映画鑑賞記8「エノケンの猿飛佐助」「エノケンの鞍馬天狗」

時代劇は数が多いので、基本的に二本立てでいきます。公開順なら「猿飛佐助」と「鞍馬天狗」の間に「法界坊」が入るんだけど、分量的にちょっと入れ替えますね。


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エノケンの猿飛佐助
たしかに時代劇っちゃ時代劇なんですが、子供向けというか、ま、「孫悟空」同様ファンタジーですね。
これも「ちゃっきり金太」同様「総集編」という名の大幅カット版なのですが、「ちゃっきり金太」に比べると長めだし、ストーリーの破綻はほぼない。だから普通に一本の作品として見ることが出来ます。

前後篇として作られたわりにはスケールが小さい。子供騙しの箇所はあるし、歌うシーンも少ない。しかも興行的にも失敗だったようで。
でも個人的には悪くないんです。
「魔術師」の時に比べるとトリック撮影もだいぶ進歩してるし、その「魔術師」の帽子同様の効果がある小道具の「しゃもじ」を上手く使うことで喜劇的緊張感もあります。

ストーリーも恋愛部分で珍しい趣向があって、意外な展開を見せます。あえてオチは書かないでおきますが、少なくともワタシは引っ掛けられました。
ただひとつ、どうも夜のシーンが多くて、とにかく見辛い。ビデオの品質のせいもあるので、これはマイナス要素に挙げづらいのですがね。

さてこの「猿飛佐助」、「エノケンと呼ばれた男」によれば、後篇は「大恐妻家になった佐助とその家族によるホームドラマ」とあるのですが、総集編と銘打たれたビデオを観る限り、大恐妻家のシーンはラストというかオチにあるだけですね。このオチは植木等映画の定番のオチになってるのが面白い。はて、「猿飛佐助」を意識したんだろうか?

もうひとつ。柳田貞一扮する真田幸村の登場シーンになると悉く「暗い日曜日」(のインスト)がBGMに使われてるから、あ、これは暗示だな、と思ったら、別に暗示でもなんでもなかった。
暗い日曜日」は自殺者を大量に出した呪いの歌とか言われてることで有名です(検索したらいっぱい出てきます)が、エノケンもカバーしてるし、いったい当時、この曲がどういう扱いだったのか、ますますわからなくなりましたよ。


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エノケン鞍馬天狗
前回「追っかけのシーンにギャグがない」「本当にエノケンが抜群の身体能力があったのかも、伺える場面がない」というようなことを書きましたが、その辺の不満は「鞍馬天狗」である程度解消されました。ま、所詮「ある程度」ですが。

21世紀の今では隅っこに追いやられたものの、この当時(1939年)なら子供だろうが大人だろうが誰でも知ってた、というかあまりにも馴染み深い大佛次郎の「鞍馬天狗」が原作ですが、意外にもパロディーではなく正調で、その中にギャグが入れ込んであるって感じです。

もちろん鞍馬天狗ですから子供向けの要素が強いんだけど、んで実際子供が活躍する。で、これがわりと良いのです。
杉作に扮したのは悦ちゃん(という芸名の子役。獅子文六原作の「悦ちゃん」で主役を演じたことからこの芸名になった)なのですが、計算してみると当時13歳。役柄上はもちろん男の子ですが、芸名からもわかるように、本当は女の子です。

これがね、どういったらいいのか、かなり艶めかしくて困ってしまいます。ずっと生足を出してるんだけど、これがどうみても男の子の足じゃなくて「女性と女の子の中間」なんです。
ワタシもそこまで鞍馬天狗は知らないけど、こんなセクシーな杉作はこの映画くらいじゃないかねぇ。(杉作を少女が演じるのは定番だったようで、かの美空ひばりも「鞍馬天狗 角兵衛獅子」で杉作少年を演じたことがある)

さて、追っかけについてです。
鞍馬天狗だから当然白馬に乗って参上!みたいなシーンが多いのですが、これがどう見てもスタントなし、つまりエノケンがやってるんだけど、猛スピードで駆け抜けたり(但しコマ落としあり)、馬から転げ落ちたり、馬上から直接木の枝に捕まったりしてる。これがかなり凄い。

途中の追っかけは珍しくギャグ入りだし、クライマックスの大立ち回りではギャグはないものの「エノケンの身軽さ」が非常によくわかる。
正直、こと追っかけだけに限るなら、ズタボロのカット版「ちゃっきり金太」や個人的にまったく物足りない「どんぐり頓兵衛」を観るより、この「鞍馬天狗」を推します。

監督は時代劇専門だったという近藤勝彦って人ですが、想像以上に「動きのエノケン」を上手く表現できているし、展開も洗練されているように思う。
ただ夜のシーンもロケは昼間撮っているので(夜間撮影が出来なかった当時はよくあった)、劇中の時間がわからず混乱します。ま、これは技術的問題なんだから「昼とか夜とか気にせずに観る」しかないんだけどね。

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