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~これでも仕事用です~

運命の日 -24 January 2014-

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本ブログはエノケン映画をはじめとする戦前モダニズムのことや、1960年代の話などの古〜いネタばかりなので、趣味全開のブログと思われているかもしれません。
が、実はここは「Gumi-chan1961」の公式ブログ
なのであります。
というわけで、久しぶりに公式ブログらしいことを直球で書きます。ちょうど二周年だし。
え?何から二年なんだって?それはね・・・。

さて、誰しも「自分の運命を決定づける日」というものがあると思います。
ワタシにとってそれが2014年1月24日でした。
この日はロンドンはアルバマールストリートにあるポール・スミスのショップにて、初の海外でのエキシビション「Gumi-chan X Paul Smith in London」の開催初日だから当然です。
それではどうぞ。


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↑ ロンドンのアルバマールストリート。右手の、FedExのバンが停まっているあたり、ここが会場となった、全世界にあるポール・スミス・ショップの旗艦店です。


セッティングは前日の夕方、ショップの閉店とともに始まりました。
会場となるショップは地下にかなり巨大なバックヤードがあり、一旦そこに荷物を運びこんだ後、作品の開封、そして設置へと進んだのです。


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↑ もしかしたら本邦初公開?これがアルバマールストリート店のバックヤードです。


これが思ったより大変でした。
何しろ初の海外でのエキシビションです。人形は日本でやる時と一緒ですが、ジオラマは出来るだけサイズをコンパクトにしなければいけない。でないとものすごい巨大な荷物になるし、何より輸送時のアクシデント回避の意味もあり、初めて「組み立て式ジオラマ」にしたのです。

日本で作ってる時は上手く簡単に組み立てられたのですが、いざ現地で組み立ててみると、どうも上手くいかない。微妙にサイズがズレてたりする。
しかも荷物の中に入れたと思い込んでいた両面テープを忘れるという失態もあり(日本なら両面テープなんかコンビニでも買えるけど、そもそもロンドンにはコンビニはないし、何しろショップの閉店時間からだったので手に入れるのにえらい苦労した)、もう四苦八苦しながら組み立てていったのです。
それでも限られた時間の中で、なんとか完成し、あとは翌日を待つばかりとなりました。


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↑ 設置の様子。4人がかり(ポール・スミスのスタッフの方にも手伝ってもらったので、計7、8人)でやったにもかかわらず、かなり骨が折れました。


そして24日です。
お客さんの反応も怖かったのですが、これは何となく自信があった。
たしかに場所的にはワタシども作品は不釣り合いです。
説明が必要になりますが、アルバマールストリートは日本でいえば銀座に相当するところで、高級なブティックが立ち並んでいます。
そしてポール・スミスのショップはといえば、いうまでもありませんが、とてもシックなデザインです。

そんな中に1961年の日本の片田舎を舞台にした作品、なのですから、そりゃ最初設置が完了して全体を眺めた時の違和感はすごかった。
でも、だからこそ、これは埋没せずにお客さんの興味を惹きつけられるぞ、という自信に変わったのです。


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↑ こうやって眺めてみると、実にシックな店舗の中に、実にフシギな空間が生まれた、という感じ。


想像以上にお客さん方の反応は上々でした。
が、もうひとつ難関がありました。それは「ポール・スミス氏本人の反応」です。
この日の夕方、ポール氏が来店されて作品を観てもらえることは事前に決まっており、だからもう、夕方までのドキドキはハンパじゃなかった。

ポール氏には、もちろん写真ではワタシどもの作品を観ていただいたことはありますが、現物は初めて。
実際に観てもらって「なんだこれ」みたいな反応だったらどうしよ。もうそうなったら今まで協力してもらった幾多の人の顔に泥を塗ることになってしまう・・・。
広い広いバックヤードで、ワタシたちは無理にはしゃぐしかありませんでした。本当はド緊張なのに。


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↑ ワタシたちの緊張を察してくれたのか、スタッフがコーヒーを淹れてくれました。カップはもちろんポール・スミス


ポール氏本人の前にまずポール・スミス専属のプレスの方が来られて写真を撮っていきます。その間もドキドキは止まりません。カメラマンが来たってことは、もうすぐ本人が来られるサインでもあるんだから。


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↑ そして、ついにやって来られました。ポール氏です。


ご本人にお会いするのは二回目なので、そこまでの緊張はありませんが、それより作品を観てどう思われるか。

手のひらに、汗が滲むのを通り越して、味わったことのない鈍痛が走りました。極度の緊張からでしょう。
ポール氏はジッと作品を凝視しています。時折担当者、そしてカズミ・アカオからの説明を頷きながら聞いています。


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↑ うん、兎にも角にも、かなり真剣に見てくださっている・・・。


かなりの時間、といってもものの10分か15分くらいなんでしょうが、ここまで凝視してもらえるってことは、少なくとも悪い反応ではない。
語弊があるのを承知で書けば、この人は天才的な「芸人」だから、カメラの前では最高の笑顔を浮かべてくれますが、どこまで作品を気に入ってくれたのか、本心まではわからない。
それでも、悪い反応ではなかったというだけで心底ホッとしたのです。


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↑ 無事終了。もう、とにかくホッとしたとしか言いようがありませんでした。


ポール氏の「本心」がわかったのは、それから数日経った頃でした。
開催期間中、ポール氏は3日に一度はショップを訪れ(こんなことはあり得ないらしい)、何とお客さんに自ら作品の説明を実に事細かにしてまわっていた、というのです。

「グミちゃんの家は自転車屋なんだ。だから僕に、これが若い時の僕だよ。それで自転車を届けてくれたんだ。僕は自転車が大好きだからね」
「これはミートショップだ。こうやって店頭でフライを揚げているんだ」
「この塔から街を眺めて火事が起こっていないか見張ってるんだ」

もし作品がお気に召さなかったら、こんなことをしてくれるわけがありません。
ここにきて初めて「このエキシビションは大成功だったんだ」と思えたのです。

ヨーロッパでは、ポール氏に認められる=アーティストとして認められる、ということに他ありません。
だからようやくワタシたちも胸を張って「アーティストです」と名乗れるようになったわけです。


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↑ まさにこの写真の通り、ポール氏とワタシどもの作品がガッチリ握手をしたのです。


これからもっと良い作品を作らなきゃ。そんなプレッシャーが増したことは間違いないけど、同時にすごいモノを手にすることが出来た。
だから「Gumi-chan1961」が世界中の人に知れ渡ること、それがポール氏への一番の恩返しのような気がするのです。
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