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~これでも仕事用です~

大大阪タイムスリップ觀光

戦前モダニズム
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阪神間モダニズム、とくに戦前の神戸のことは「ヨシミツ家の人々」という連作を通じて何度か書かせていただきましたが、モダニズム、にかんしては大阪だって負けちゃいない。それどころか戦中期まで大阪は東京とマジでタメを張る、日本が誇る大都市でしたからね。
それは「大大阪」という呼称からも偲べる。「おおさか」の「おお」の前に「だい」をつける、つまり「大」がカブっちゃってるのは今見るとおかしいけどね。

さて、ずっと観たい観たいと思っていた映画がありました。
1937年、ということは日中戦争が始まった年ですが、それでも戦前モダニズム文化はまだまだ勢いよく燃え上がっていたこの年、一本のドキュメンタリー映画が製作されました。
タイトルは「大大阪觀光」。実製作したのはJ.O.スタヂオ。

J.O.スタヂオ(カタカナ表記だと「ジェイオー」ではなく「ゼーオー」)は現在も続く大沢商会の傍系会社で、初期は貸しスタジオでした。やがて自主制作を開始し、その後東宝映画に合流して東宝映画京都撮影所となります。
スタジオは1941年に閉鎖になりますが、ここから中川信夫今井正市川崑円谷英二といった人材が巣立っていきました。
東宝に合流したことからもわかる通り、同じく東宝の源流となったP.C.L.に似た近代的な経営&作風の会社で、当然「大大阪觀光」もかなりモダニズム要素の強い作品に仕上がっています。

しかしワタシもウッカリしていたというか、こんな作品があるのをわりと最近まで知らなかった。数年前に大阪市交通局からDVDが発売されてたみたいだけど、今はもう取り扱ってない。
さすがに無理か、と思っていたのですが、上手い具合にネットオークションで手に入れることが出来た、とこういうわけです。

僅か29分ほどの短編映画ですが、実にテキパキとした構成で、まるでワタシが興味があるところをピックアップしてくれたかのように次々と大阪の「新」名所を紹介してくれます。
いや、本当にね、これって意外と珍しいのですよ。
この手の観光目的のドキュメンタリー映画はいろいろ見たけど、どれもこれも、非常にかったるい。というのもその土地ならではの民族とか文化をやたら長時間見させられる場合が多くて。
ところがこの「大大阪觀光」は、短いカットをパッパッと繋いでいる。ひとつのシーンをタラタラ見せない、というのが徹底していて物凄く心地いいんです。

さて肝心の具体的な内容ですが。
これは文章をウダウダ書くより現物を見てもらう方が早い。
YouTubeにダイジェスト(というか映画の冒頭)5分分がアップされています。しかも公式チャンネルなので堂々とリンクを張れます。


大阪市交通局の昭和レトロ映像を大公開!~part3~(大阪市)

白眉なのは地下鉄の映像で、ちゃんと車内案内が電光表示なのが凄い。電光ったってただ駅名が光るだけだけど、戦前の時点ですでにこういうシステムが導入されていたことは驚愕です。

先のダイジェストにない映像でいえば、中之島のビルディング群は今でも現存しますが、かつて千日前にあった大阪劇場や大阪歌舞伎座(現在のビックカメラなんば店の位置にあった。その後千日デパートという雑居ビルになったが1972年に火災で焼失)なんかも映っています。
ドキュメンタリー映画なんでラストを割っちゃってもいいと思うから書きますが、大阪歌舞伎とネオンきらめく夜景がオーバーラップするところは、1937年当時の大阪が「新しいも古いも渾然一体となってますよ」ってのが本当によくわかる。つかそれをアピールするための映画なんだけどね。

ここからは余談っつーか。
ワタシが「大大阪觀光」なる映画を観たかったのは、当然「大阪における戦前モダニズムの光景が観たかったから」に他ありません。
ところがそんなワタシの目的と相反して、途中、何のことか爆笑してしまったんです。

それは天王寺動物園の映像なんですけど、どうもね、ワタシのツボっつーか、とにかく「チンパンジーが人間の真似事をする」ってのに弱いんです。
昔のバヤリースのCMもそうだし、1970年頃に放送されたっていう「おはようチンパン」って番組がずっと見たくてね。
これ、演者がチンパンジーで声優が吹き替えてるんだけど、一応ホームドラマみたいな設定らしくて。もちろん現物を見たことはないんですが。

そんなワタシからして「大大阪觀光」でのチンパンジーは凄い!いや芸的に凄いってほどじゃないけど、笑いの破壊力たるや相当なものです。
何というか構成が上手い。偶然ではなく明らかに、真面目さを崩さないまま笑かしにかかっている。「至極真顔でボケ倒している」というか。
これ、実際に見てほしいなぁ。ワタシと同様にチンパンジーに弱い方にとっては、戦前モダニズムなんてからきし興味がなかったとしても、このシーンだけはぜひ見ていただきたいのです。
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