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~これでも仕事用です~

エノケン映画鑑賞記11「エノケンの誉れの土俵入」「エノケン・虎造の春風千里」

今回も二本立てで。両方ともそれなりに良く出来ているので書いてて気が楽です。
批判、罵倒ってしんどいですから。


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エノケンの誉れの土俵入
中川信夫監督4本目の作品ですが、ついに中川信夫の目指すテンポの良さと、エノケンの軽快なのにノンビリしたキャラクターが噛み合って快作になった感じです。少なくとも中川信夫監督作品の中では現存するエノケン映画の最高傑作といわれる「エノケンの頑張り戰術」より確実に面白い。

ギャグもちゃんとしています。
身投げを天丼にすることによってブラックジョークとして成立させたり、エノケンの大飯食らいって設定も全部ギャグになってる。たいしたもんです。
配役もいい。
敵役の巨漢力士に岸井明ではなく横尾泥海男を持ってきたのもいいし、若き日の進藤英太郎もカッコいい。そしてヒロインの御舟京子も実に可愛い。
御舟京子?そう、後の加藤治子です。もちろん無茶苦茶若いけど、ほんのすこしだけ後年の面影があります。ま、若くて美しい盛りの加藤治子なんてなかなか想像できないかもしれませんが。(画像の左が御舟京子こと加藤治子です)

タイトルでわかる通り、この映画は相撲を題材にしており、いわばスポーツ喜劇といえるものです。
喜劇でありながらスポーツ物のカタルシスもキチンと組み込んでいて、クライマックスがちゃんとエノケンと横尾泥海男の対戦になっている。
(横尾泥海男が「横綱になる」と言っているのはご愛嬌。江戸時代は大関が最高位で横綱は名誉称号でしかなかった)

んでもって期待通り、クライマックスでエノケンがアクロバティックな動きを見せてくれます。
ま、チャップリンの「街の灯」のボクシングシーンからのイタダキが結構あるけど、それでも土俵上でトンボを切ったりする、てか出来るのはエノケンならではです。
エノケン自身、この作品は気に入っていたようですが、コメディアンとしてやることを全部やってるんだから手ごたえもあったのでしょう。

そしてそして、何より嬉しいのは、57分という短さでしかも時代劇でありながら、エノケンが歌うシーンが多いのです。
御舟京子とのデュエットもあるし、お馴染み宏川光子とのデュエットもある。とくに宏川光子とのデュエットはスイング感に溢れていて実に良い感じです。

二十一世紀の今観て面白いかどうかはさておき、「喜劇的素養が豊富なミュージシャン」ではなく純粋に「コメディアン」としてのエノケンの魅力が詰まっている。
是非、とまではいいませんが、こういうのを「一見の価値がある力作」というんじゃないでしょうかね。


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エノケン・虎造の春風千里
お馴染みの道中記だし、一応追っかけもあるんだけど、筋立ては完全に人情モノ、ですな。
太平洋戦争の始まる年の正月公開ってことで、巻頭、いきなり「心で感謝 身で援護」の文字がデカデカ現れるんだけど、時局臭はこれとラストにちょろっとあるくらいで、ま、この程度は「国賊視対策」だったとしても我慢できるレベルです。

冠にエノケンとならんで虎造の名前が入ってるくらいだから広沢虎造が重要な役で出てくるんだけど、これが意外といい!虎造節がいいのはもちろん(意識したわけじゃないんだろうけど「エノケン森の石松」の補完にもなってる)、演技もイケます。何たって声がいいから演技力云々以前に説得力がある。
ところがエノケンと虎造がほとんど絡まない。そういう話、といってしまえばそれまでなんだけど、もっと普通にふたりで道中させてよかったんじゃねーの?と思う。それでないとエノケンの負けん気の強さが発揮できないと思うんですがね。

あと、せっかくなんだから、エノケンが歌って虎造が唸る「変型掛け合い漫唱」とか出来たはずなんだよな。
つか全体的に「ちゃんと作りすぎた」感があるな。ま、いろいろもったいない映画、というか、ね。

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