~これでも仕事用です~

1961年の流行語

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手元に「現代<死語>ノート」という本があります。
著者は作家の小林信彦。本人も書いているように、死語かどうかの判断は微妙な感覚が必要なのですが、少なくとも1961年前後でいえば小林信彦は雑誌の編集(「ヒッチコックマガジン日本版」)にあたっており、いわば時代の空気をもっとも感じ取れる場所にいたわけですから信用できます。

今回はこの本で紹介されている「言葉」を、ワタシなりの見解を加えながら書いていきます。
あえて「言葉」としたのは、著者が意図的に現代でも死語になっていない新語、流行語を取り上げているからで、その辺もまとめて。
ただ1961年、ということは、前年の1960年の「言葉」も依然流行の最中と考えられますので、この二年分を。

まずは1960年から。
・黄金の六◯年代(アメリカから伝わった)
・声なき声(安保デモ絡み。岸信介が発した)
・フランス式デモ(横一列に並ぶデモらしい)
・松竹ヌーベルバーグ(大島渚などの「新進気鋭」「新感覚」の監督を売り出すために、ゴダールなどの本家ヌーベルバーグにあやかって松竹がつけた)
・大洋が一敗(映画「太陽がいっぱい」(アラン・ドロン主演)と、この年日本一になった大洋ホエールズの語呂合わせ。「・・・、巨人が二敗」と続く)
・ファンキー族(ファンキーハットを被り、アロハシャツを着た若者の俗称)
・ファンキーハット
・ダッコちゃん(ブームはこの年だけど、ワタシが子供の頃にもあった。今はいろいろあって元の「顔」では販売できないらしい)
・インスタント(森永インスタントコーヒーの発売から)
・トップ屋(週刊誌のトップ記事を書くフリーライター
・寛容と忍耐
・所得倍増
・私は嘘は申しません
・マアマア居士(社会党浅沼稲次郎の愛称。この年、演説会中に少年に刺されて死亡。この時の様子はかなり鮮明な画質のVTRが現存している)
・ドドンパ(流行のリズム。翌年渡辺マリが「東京ドドンパ娘」をヒットさせる)
・リバイバル
・家つきカーつきババア抜き(独身女性が望む結婚の形。これは微妙に死語じゃないですね)
・反面教師

この中でとくに説明が必要なのは「寛容と忍耐」でしょうか。
この年、池田内閣が成立。就任前からいろいろと評判の悪かった池田勇人が掲げたのが「寛容と忍耐」、そして次の「所得倍増」です。
さらにいえば次の「私は嘘は申しません」というのも池田勇人の言葉。
総理になる前に評判を落とす原因となった暴言の数々(貧乏人は麦を食え、他)も含めて、この人、妙に脳裏にこびりつくフレーズが使える人ですな。
二十一世紀の世界に住むワタシがいうのもナンだけど、この人には「永田町のトニー谷」と命名したい。

一番最後の「反面教師」は今もってまったく死語じゃありません。むしろ活用範囲が広がっている感すらある。
では何故ここに出てきたのかというと、なんとこの年の「新語」なのです。
元は毛沢東語録らしいけど、いやぁ、まさかここまで新しい言葉だったとは。


続いて1961年。
・レジャー
・トサカにくる(頭にくる=怒る)
・申しわけない
・どーもすいません
・女子学生亡国論
地球は青かったガガーリン
・現代っ子(阿部進提唱。60年代後半に「カバゴン」の愛称でテレビに出まくった)
六本木族(別名「野獣会」。ま、当時の遊び人たちです。峰岸徹中尾彬大原麗子小川知子あたりがいた)
・アンネ(生理用品)
・ガン・ブーム(病気じゃないよ。そんなブーム嫌だ。銃の方です)
・巨人・大鵬・卵焼き(子供の好み&大人ならありきたりな好み)
・キャノネットキヤノンから発売された、当時としては低価格高機能なカメラ)
・ホンコン・シャツ

さらに「新語」として
・ラリる
・渋滞
・ムード
・プライバシー
・レンタカー
・時差出勤

なんだか途中まで、一見普通の言葉が並んで不安になりますな。
「申しわけない」とか「どーもすいません」とか謝ってばっかりだけど、これは発した人が発した人なので流行語になったという例。
「申しわけない」は坂本九(発音的には「モーシャケナイ」)、「どーもすいません」は林家三平です。と書けば、リアルタイムにこの時代を生きてこられた方ならすぐにわかるはずです。

地球は青かった」と「巨人・大鵬・卵焼き」はジスイズ流行語で、懐古本では必ずページが割かれています。

そういやホンコンシャツってなくなったなぁ。まったく個人的なことだけど、ワタシの中学校の夏用の制服がホンコンシャツでした。
無理矢理言葉で説明するなら、ま、開襟シャツ、とでもいうのかね。

新語はまたまた驚きで、「ラリる」とか「時差出勤」はわかるとしても、「渋滞」「ムード」「プライバシー」はそれまでどんな言葉で同じ状況を説明していたのか、まったく見当もつきません。
「渋滞」は「道路の混雑」? 「ムード」は「雰囲気」? 「プライバシー」は・・・「個人の尊厳」?いやいやそれじゃ大仰すぎるっしょ。

もし1950年代にタイムスリップしたとして、ムードやプライバシーは元が外国語だから、中には理解してもらえる人もいるのかもしれないけど、もしうっかり「渋滞」なんて言おうものなら、「ジュータイ?なにそれ?」となるわけですよね。
ま、タイムスリップの予定はありませんが。

ちなみに翌1962年の主だった言葉は
・青田買い
・ツイスト(ダンス)
・あたり前田のクラッカー(「てなもんや三度笠」の劇中で主演の藤田まことが発した。「前田のクラッカー」は当然スポンサーの商品名。今もスーパーで売ってます)
・無責任(植木等主演の「ニッポン無責任時代」から)
・C調(これも上記の映画とその主題歌「無責任一代男」で使われた。C調なヤツ、つまり逆にすると「調子いいヤツ(=お調子者)」ってことです)
・いっぱいやっか(伴淳三郎の日本酒のCM)
・中間層

なんか一気に時代が変わったというか、テレビ発の言葉が増えています。

いうまでもありませんが「Gumi-chan1961」の舞台は1961年なので、1962年の言葉は登場しません。もし登場したら、それは間違ってるってことです。
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