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~これでも仕事用です~

1936年の流行語

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以前「1961年の流行語」というエントリを書きました。
この時資料として使わせてもらったのが小林信彦著「現代<死語>ノート」なのですが、この本、そして「現代<死語>ノートⅡ」にも1936年はカバーされていない。さすがに古すぎるか。

そこで今回は別の本を元に書きます。それが榊原昭二著「昭和語」。ま、この著者にかんしてワタシはよく知らない。巻末のプロフィールから朝日新聞出身だということがわかる程度です。
しかし言葉だけをピックアップした本はあんまりないし、あからさまな間違いや酷い偏見も見られないのでね。

ただし問題もあります。といっても本の内容に関してじゃない。
というのは、何しろ時代が時代です。流行語の大半は政治とか戦争絡みなんですよ。うーん、これは避けたい。イデオロギーについて云々のためのブログじゃないからね。
しょうがない。意図的にそういった言葉は排除しますか。
だから必然的に数が少なくなってしまうのですが。

もうひとつ。前回の「1961年の流行語」では前年の1960年からの二年間分について記しましたが、今回は当時の情報伝達の遅さも考慮して、1934年から三年分にします。
もちろん分量を稼ぐ意味合いも、あるんだけどね。

それでは1934年から。

忠犬ハチ公
・開襟シャツ
・パパママ論争
・泣くなよしよし(「赤城の子守唄」より)

まずは忠犬ハチ公から。
どうも誤解が多いようなのであえて書きますが、ハチ公が死んで銅像が作られたわけじゃない。銅像はハチ公がまだ生きている時に出来たんですね。
この年渋谷駅前にハチ公像がお目見えし、自身の銅像を見上げていたハチ公は翌年三月に永眠しました。

生前からすでにハチ公は人気者だったようで、同年制作のP.C.L.映画「あるぷす大将」(山本嘉次郎監督)では本物のハチ公が登場するシーンがあります。
この映画はワタシもまだ未見なのですが、4月18日朝7時30分から衛星劇場で放送されることになりました。
観れる方はぜひご覧になっていただきたい。もちろんワタシも観ます。楽しみ!

開襟シャツは何のことか「1961年の流行語」でも「ホンコン・シャツ」として取り上げています。流行の輪廻転生というかなんというか。

パパママ論争とは今となっては信じられないかもしれませんが、当時の文部大臣が、両親のことをパパ、ママと呼ぶのは怪しからん、と発言したんですね。如何にも時代が出ています。
それより驚くのは、この当時すでに文部大臣が問題視するほど「パパ」「ママ」という呼称が一般的になっていたことです。
これだけで1930年代が如何にモダンというかアメリカナイズされた世の中だったかがわかります。

続いて1935年。
・ソシアル・ダンピング
芥川賞直木賞
アンゴラウサギ
・「あなぁた」「なぁんだい」
・喫茶店
・ハイキング
・暁の超特急

ソシアル・ダンピング、これは低価格を売りにして輸出を伸ばすという、まァかなり遅れてアジア各国がやった施策です。掘り下げても面白くないのでおわり。

芥川賞直木賞はいまだに注目が集まる賞ですが、始まったのがこの年なんですな。

アンゴラウサギは毛皮として注目されたわけですが、このご時世、うっかり海外に毛皮を着ていこうものならエラい目にあいます。ま、ワタシには毛皮なんか買えないけど。

「あなぁた」「なぁんだい」は、「二人は若い」という歌を知ってる方なら節なしではいえないでしょう。
ちなみにこの本の中で、日活映画「のぞかれた花嫁」の主題歌となり、劇中で星玲子とディック・ミネによって歌われた、とありますが、ディック・ミネが歌ったのはレコードだけで、劇中では杉狂児が歌っています。

正直「喫茶店」とか「ハイキング」をこの年の流行語として扱うのは抵抗があるんだけどね。この年の新語ではないし、この年になって爆発的に広まったワケでもないから。

その点「暁の超特急」は間違いなく新語であり流行語で、100m走で10秒3(当時の世界新記録)をマークした吉岡隆徳につけられたニックネームです。
しかしこういったネーミングセンスはこの時代の方が優れていますな。


で、本丸の1936年。
・ああそれなのに
・忘れちゃいやよ
・前畑ガンバレ!
・下腹部

「ああそれなのに」と「忘れちゃいやよ」はそれぞれ美ち奴渡辺はま子が歌った流行歌から。レコードの正式タイトルは「あゝそれなのに」と「忘れちゃいやヨ」ですが。
この頃から本格的に「歌のフレーズから流行語が生まれる」というパターンが出てきます。

「前畑ガンバレ!」は「1961年の流行語」で取り上げた「地球は青かった」に匹敵するディスイズ流行語です。
河西三省の名実況ひとつで、あまり水泳に興味がない人にまで前畑秀子は永遠のレジェンドになったといえますが、オリンピックの中継からの流行語はたぶんこれが初めてのはずです。

んで、最後の「下腹部」です。これだけじゃ何のことかぜんぜんわからない。
しかし「阿部定事件」と言われると、ああ、と気づいてもらえる方もおられると思います。
愛人の下半身の一部分、ま、男性のアレです。それをちょん切ったことで一大センセーションを巻き起こしたこの事件ですが、さすがにはしたないと思われたのか、メディアではその箇所について俗称は使われず、曖昧に「下腹部」とされたのです。ま、たしかに腹の下だけど、これじゃわかんないよね。

この事件は時代背景が浮き彫りになった、こういう言い方はナンなんだけど、非常に面白い事件なんですよ。
でも本ブログの趣旨からズレるので、詳しい記述は止めておきます。気になる方は「阿部定」で検索してみてください。
今日はこの辺で。
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