~これでも仕事用です~

戦後モダニズム3〜戦後の象徴曲〜

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今回はモダニズムとはちょっと違うかもしれないけど。

さて、世の中には名曲とは別に「時代の象徴曲」というものがあります。
この場合、楽曲のクオリティとか売上枚数とかは関係ない。そりゃまったく売れてない=世間に浸透してないんじゃ困るけど、では売上枚数で時代の象徴曲が決まるかといえば、違うわけで。
たとえば2010年代でいうなら「ようかい体操第一」とか「あまちゃんのテーマ」とか「恋するフォーチュンクッキー」あたりが象徴曲といえるんじゃないかと。
要は後で振り返った時に、ああそうそう、と思えるような曲。当時のVTRを流した時にBGMとして成立する曲、ともいえます。

戦後すぐの時代の象徴曲としては「戦後モダニズム1〜りんごの唄と東京ブギウギとふたりの喜劇王〜」でも触れた通り、やはり「りんごの唄」と「東京ブギウギ」が強い。
だけれども、どうも、焼け跡やヤミ市の映像のBGMに使われすぎて、時代の象徴というより「戦後の『映像』のBGM」になりすぎた感があります。
そこで、この2曲以外に「ああ、戦後っぽい」と思えるような「音」の曲を挙げていこうかと。

ですがその前に。
戦後すぐの音楽というと、服部メロディーにトドメをさします。
服部良一自体は戦前期から活躍した人ですし、実は戦前期の方が面白いのです。
が、戦後すぐの世の中にピッタリの、エネルギッシュで、芭蕉じゃないけど「おもしろうて、やがて悲しき」を兼ね備えた旋律の数々を生み出した服部良一こそ、戦後すぐの「象徴音楽家」でもあるわけで。
しかし、もちろん、服部良一だけじゃない。
たとえば・・・。

「東京の花売娘」
阿佐田哲也の原作を和田誠が映画化した「麻雀放浪記」の巻頭で流れる、アレです。
戦前期、ほぼ岡晴夫と歩みを共にした上原げんとが作曲ですが、実は戦前に発表した「上海の花売娘」「広東の花売娘」に続く「花売娘」シリーズの第三弾なんですね。
なんか微妙な転調を繰り返すのが、戦後すぐの不安定さとあまりにもピッタリで、1946年発売に相応しい象徴曲だと思います。

「とんがり帽子」
これは戦災孤児がテーマのラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の主題歌だからちょっと卑怯なんだけど、卑怯だろうが何だろうが、象徴曲であることには変わりない。
ラジオドラマを元にした映画もありますが、それより子供映画の名手であった清水宏がこの時期に監督した「蜂の巣の子供たち」をお勧めします。
この映画は本物の戦災孤児たち(当然素人)を使ったセミドキュメンタリー風の作風で、映画版「鐘の鳴る丘」よりも「とんがり帽子」の雰囲気があります。

作曲は、1964年東京オリンピックの開会式と閉会式で演奏された「オリンピック・マーチ」や通称・六甲おろしで有名な「阪神タイガースの歌」などスポーツ関連の数々の名曲を手がけた古関裕而です。

「ちょいといけます」
これまた古関裕而作曲。で、この曲はエノケンとロッパの初共演映画「新馬鹿時代」の主題歌です。
コミックソングとしては、戦前のエノケンソングやロッパソングとも肌触りが違う。けれどもね、某所で「まるで植木等の歌みたい」とあったけど、ワタシはクレージーキャッツのファンだからわかるけど、それも違う。
もし、強いていうなら、トニー谷の楽曲の雰囲気に近いけど、それもそこまでいうほどじゃないんだよなぁ。

そろそろ服部良一の話に移りましょう。やはり、服部メロディーは外せません。

「ジャングル・ブギー」
戦後の笠置シズ子といえば、もちろん「東京ブギウギ」もいいんだけど、黒澤明監督の快心作「酔いどれ天使」の劇中で歌われた、この曲の印象が強い。やっぱ映像付きは強いやね。

他にも笠置シズ子で「セコハン娘」とか戦後すぐっぽい曲はいろいろあるし(セコハンとはセコンドハンド=中古、の意味で、「ニコイチ」や「ニコヨン」などと並ぶ当時の流行語)、同名の映画で笠置シズ子高峰秀子他が歌った「銀座カンカン娘」もある。(レコードは高峰秀子のソロ)

ただ天才笠置シズ子と組んでいって、もしかしたら服部良一も普通の曲じゃ満足できなくなってきたのか、前衛的な「買物ブギー」や「オールマンリバップ」などの名曲を生み出していくことになるんだけど、この辺は前衛すぎて全然象徴曲じゃないんですよね。

「胸の振子」
市川準が撮った「トキワ荘の青春」のエンディングで流れる、といえば、あぁあの曲か、とお気づきになられるのではないかと。
映画自体は、個人的にはあまり感心しない出来なのですが、このエンディングは本当に素晴らしい。ジーンときます。

さて曲そのものですが。
先ほど「エネルギッシュで、おもしろうて、やがて悲しき」が服部良一の本分みたいに書いたけど、これはしっとりウェットなんだけど、モダンさやひんやりしたところも残しつつ、それでも「実に戦後らしい」旋律とアレンジに仕立てあげている。

また歌詞もいい。センチメンタルな歌詞を書かせたら右に出るものがいないサトウ・ハチローが作詞なんだけどさ。
ここで超奇才ともいえるサトウ・ハチローのことを書こうかと思ったけど、やめておく。この人の超無茶苦茶な人生を二三行で書けるわけないわ。

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