~これでも仕事用です~

ラー博に漂うもの

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一時期、1960年代(もしくは昭和30年代)を主題にしたテーマパークが雨後の筍の如くオープンしました。
しかしそのほとんどは、たいした成功もおさめられずに撤退している。現在も活況を呈しているのは、お台場にある「台場一丁目商店街」と、あとひとつ、今回は「新横浜ラーメン博物館」を取り上げたいと思います。

新横浜ラーメン博物館(以下ラー博)は登場時から、他の、いわゆるレトロテーマパークと違いました。
初めてラー博に行った時のことはわりと鮮明に覚えています。
開館して2年ほど経った頃だったと思いますが、何よりショックだったのが、メインといえる昭和の街並みを再現した場所が地下にあったということです。

演出も上手かった。
階段を降りる毎に少しずつ「昔っぽく」なっていき、階段を降り切った先には、夕方を模した広場風の景色が広がる、というのは、ある種の感動をおぼえました。
しかしこの時はただ感動しただけ。よくできたテーマパークに行って、ラーメンを食って帰ってきた、本当にそれだけでした。

ワタシにとってラー博への存在意義というか認識が大きく変化したのは2006年です。
そう、この年からワタシがグミちゃんに関わりだしたのです。
「成り行き」からワタシはジオラマを作ることになったのですが、実際どう作っていいのか見当もつかない。見本らしい見本がなかったのです。

この頃にはすでに昭和30年代をテーマにしたジオラマを作る作家さんは存在しており、イベントがあると足繁く見に行ったのですが、どうも、イマイチ、ピンとこない。
上手い下手の問題じゃないんですよ。参考にしようにも肌触りが違いすぎて参考にならないのです。

ワタシたちの作品である「Gumi-chan1961(当時のタイトルは「こんにちはグミちゃん」)」で目指したのは「ドチャメチャに明るくて活気のある世界」です。
ところが、この時点でワタシが見た限り、と断っておきますが、どうも他の作家さんの昭和の世界は、暗い。失言を覚悟で書けば「暗くて貧しい世界」なんですね。

また細部にかんしても「これ、昭和30年代じゃなくて20年代じゃね?」みたいなのが多くて。
ワタシは、まァ、昭和オタクなので、この辺の微妙な違いが気になって仕方がない。
ま、どっちにしろ、これは参考にならないし、できないなと。

そんな時、ふとラー博のことを思い出したんです。
たしかにジオラマではないんだけど、ワタシのイメージする世界に一番近いんじゃないか、そう感じた当時関西在住だったワタシは、遠路はるばる新横浜までやってきたのであります。

ラー博は昭和33年の街並みを再現した「ラーメンの」テーマパークですが、ラーメン「だけ」にウエイトをかけ過ぎてないところがミソで、極端にいえば「ラーメンは別に食いたくないけど、あの街並みを見るためだけに、入場料を払ってでも中に入りたい」と思わせるものを作り出したのがすごい。

ワタシはジオラマを作るためにわざわざ行ったわけですが、細部も実によく出来ている。
どこが、とは書きませんが、かなり作る上で参考にさせてもらいました。

これはまだ参考にも出来てないんだけど、一番アッと言ったのが「空」でした。
先述の通り、昭和の街並みは地下にあります。となると当然天井があるんだけど、そうなると天井に「空」を表現しなければならない。
ま、素人考えなら、夕方を再現するなら空の色をオレンジとか赤茶にしますわな。

でもラー博は違う。
夕方にもかかわらず、普通の青空なんです。つまり水色に白(雲)という色づかいにしてある。
そこにオレンジの光を当てている。この「空は青」「光はオレンジ」にすることによって、絶妙な夕方感を出しているのです。

別にレトロテーマパークに限った話じゃないんだけど、ここまで「やっつけ感のない」テーマパークは珍しい。本当に手間暇かけている。
今はもうないけど、昔は売店で「電気ブラン」が売っててね。(電気ブランの説明は面倒いので省略しますが、ま、ブランデーです)

ワタシはアルコールに弱いので、ショットをグイッとやるとクラクラしてくるわけなのですが、そんな状態でラー博をウロウロすると、本当に昭和にタイムスリップした錯覚に陥る。
何が言いたいのかというと、ちょっと酔った状態なら見分けがつかないくらいよく出来てるって言いたいだけなんですが。

ただ、もうどうしようもないことなんだけど、弱点もあった。
いくらレトロ感を出したところで、所詮は作り物、ニセモノのレトロでしかないわけで、街並みに歓びや哀感が染み付いていないのです。
ワタシは「歓喜は建物に染み付く」と考える人間なので、シラフでウロウロしても、やっぱり所詮はね、という感じは拭えなかったんです。

ところがエラいもので、ラー博も開館してから20年を超えました。
20年もの間、歓びや哀感を受け続けた結果、とうとうホンモノのレトロ感が漂いだしたのです。
いわば「老舗だけの味」を手に入れた、ということか。

これはすごいことです。最初に書いた通り、撤退していくレトロテーマパークの中、細部までこだわった演出で客を集め、営業を続けることができた。
その頑張りの見返り、といったら変だけど、ホンモノのレトロ感が生まれたんだから、ね。

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