~これでも仕事用です~

ロンドンに住んだ話4

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前回までの話はココココココ

 

学校に通い始めたものの、相変わらずクラスメイトにも馴染めず、授業内容にもついていけず、鬱屈した日々が続きました。

そんなある日のことです。
学校が終わり、ワタシは最寄り駅へと歩いていました。
あ、そういや授業中にバイブが鳴ったな、と思ってポケットからスマホを取り出した瞬間です。後ろから走ってきた自転車乗りにさっとスマホを取られたのです。
自転車はものすごい勢いで走っていきます。とても追いつけません。

正直ワタシは何がなんだかわかりませんでした。頭が真っ白とはこのことで、あまりにも突然の出来事に状況を掴めなかったのです。
数秒後、冷静になったワタシはコトの重大さを認識しました。

盗まれた・・・
買ったばっかりのiPhone5を・・・

もう、やれることはひとつしかない。学校に戻るしか。
ワタシはひたすら「ストレーン!ストレーン!」と学校で叫びました。
当時のワタシの英語力では「今、そこで、iPhone5(発売されたばかりの最新機種)を盗まれた」しかいえない。

担任のティーチャーが出てきました。
彼は即座にすべてを理解してくれ、すぐに警察に連絡してくれました。そして、大丈夫だ、気にするな、と(無論英語で、ですが)励ましてくれたのです。
それまでワタシは、ほとんど学校に行かない、いわば不良生徒です。だからティーチャーともサシで話したことなどない。
にもかかわらず、本当に事細かに様々なことに対応してくれたのです。

さらに翌日のことです。
クラスに馴染めないワタシでしたが、唯一、といっていい、ワタシを気にかけてくれるクラスメイトがいました。
彼はマリ人でした。黒人で身体も大きい。外国人慣れしていない人間にとっては、いくらにこやかに話しかけてくれても、はっきりいって、ちょっと怖かった。

その日の朝も、彼はいつものように「ハワユー?」と笑顔で話しかけてくれました。ワタシは社交辞令として受け、これまたいつものように「アイムファイン」とだけ答えました。
心なしかマリ人の彼の表情が曇りました。
彼が席を外したタイミングで、隣の席のクラスメイトが「彼(マリ人)は、昨日、あなたに何があったか、知っていて、明るく声をかけたんだ」と囁きました。

その瞬間、ワタシは涙を抑えることができませんでした。
ティーチャーだけじゃない、クラスメイトともほとんど言葉を交わしたことがない、そんなワタシのことを、心から心配してくれている・・・。

たしかに買ったばっかりのiPhoneを盗まれたことはショックでした。しかしティーチャーや警察、そしてマリ人の彼や他のクラスメイトを含めて、彼らの接し方は、ワタシの心を強く揺さぶりました。
疎外感なんか、おぼえる必要はない。いざとなったら、これだけ親身になってくれる人がいるじゃないか。

正直40歳を過ぎたオッサンが、ここまでの出来事がないと気づけないってのも情けない話なんたけど、これで本当に気づいた。
これ以降、学校に行くことは苦痛ではなくなったし(朝起きるのは相変わらず辛かったけど)、ホームワーク(宿題ね)も本気でやるようにした。

ホームワークはあえてフラットではなくスタバでするようにしました。その方がテンションが上がるから。
毎日通ってたから当然かもしれないけど、とうとう店員にも顔をおぼえられた。んで、ワタシがいくと話しかけてくれるようになった。
相変わらず英語は喋れない。だけど喋れないのとコミュニケーションをとることは全然別だ、ということがわかってきたのです。

ワタシは完全に別人になりました。
まず「英語が喋れない」ことを恥だと思わなくなった。母国語じゃないんだから喋れないのは当たり前。喋れなくてもいい、どんな方法でもコミュニケーションは取れる。それこそボディランゲージでも。
授業中もどんどん質問をするようになったし、クラスメイトとも、休み時間に積極的に話すようにした。

すると、学校に行くことが苦痛じゃない、を通り越して、楽しくなってきた。
仮に嫌なことがあっても、彼らに会えば元気になれた。
英語?んなもんどうとでもなる。いざとなったらGoogle翻訳もあるし、ノートに絵で描いて説明してもいいんだから。

暗くて重い話は今回で終わり。次からは、ま、満喫編に入ります。

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