~これでも仕事用です~

イッツアスモールワールドと世界はひとつ

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今回もハンドルネームブログの焼き直しっぽいなぁ。まァこのブログを立ち上げるずいぶん前に書いたんだからしょうがないんだけどさ。

そういえば、ポール・スミスの担当者の人に、こんなアイデアを提案されたことがあります。
「グミちゃんでイッツアスモールワールドみたいなのをやれば、どうだい?」
面白い!面白いんだけど・・・、これはあまりにもハードルが高すぎる。だってアトラクションですよ。これが可能なのは有数の大企業だけです。

とはいえ、この言葉がきっかけでモーションディスプレイに興味を持ち、モーションディスプレイのコレクターでもあられる北原照久さんにもお会いして、アトラクションは無理にしても、何とか「動くグミちゃん」が出来ないか、といろいろ研究を始めるきっかけにはなったのですがね。

さて、イッツアスモールワールドです。
実際に行ったことがない人でも、テーマ曲くらいは歌える、しかも普遍的で子供から大人まで楽しめる、いわば究極のアトラクションです。
今更内容について説明するのも馬鹿馬鹿しいのですが、ボート状の乗り物に乗って世界中を旅する、という構成になっており、各国のイメージは仕掛け人形とジオラマによって表現されています。
照明を実に効果的に使い、人形が歌い踊る様が、世界旅行レビュウとして成立しているのが凄い。
つまりエンターテイメントの国・アメリカ発の底力を、たったひとつのアトラクションにパッケージングしてあるのですね。

最初にイッツアスモールワールドがお披露目されたのは1964年ということですが、たぶんこのアトラクションが人々に、というか遊園地や遊戯機器関係者に与えたショックは計り知れなかったはずです。
しかも単に人形を動かしただけでは成立しない、レビュウの基礎がわかってないと完コピすらできない、といった作りは「真似したきゃしろよ、どうせ出来るわけないけど」くらいの、どう足掻いても埋められない「レベルの差」があったはずなんです。

ところが初めてイッツアスモールワールドがお披露目されてからわずか3年後の1967年、果敢にも(という表現は変なのですが)完コピに近い形で実現させた施設があります。
それが兵庫県にあった宝塚ファミリーランドです。

当ブログは戦前モダニズムも範疇にしておりますが、何度も出てくる名前に小林一三という人がいます。
阪急電鉄育ての親にして、宝塚歌劇東宝の生みの親でもある小林一三は「エンターテイメントを大衆のものにする」天才でした。
とくに力を入れたのが、パリ、そしてブロードウェイやハリウッドでさかんに作られていた音楽劇の日本版です。
いわゆる翻訳物ではなく(ま、丸パクリしたものもありますが)、あくまで日本人が観る、日本人が演じる、日本流の音楽劇の確立に力を注いだのです。

小林一三のやり方は徹底していて、まずは本場のものを浴びるように観せて、肌感覚でわかるくらい吸収させる、というものでした。
積極的に社員をヨーロッパやアメリカに派遣させ、帰国した社員は日本に音楽劇ブームをもたらす原動力となっていくのですが、ま、これ以上は話が逸れるのでおしまい。
ただそうした小林一三イズムは彼の死後も東宝や宝塚に残存していた、と考えて間違いないと思います。

宝塚ファミリーランドも小林一三が手がけた事業ですが、イズムが十分に残っていたからこそ「イッツアスモールワールドをやろう」としたのでしょう。
しかもファミリーランドに隣接していた宝塚歌劇に協力を仰げば、レビュウ感覚が充満したアトラクションが作れるという算段もあったと思う。(事実、テーマ曲は宝塚歌劇のトップスターによって歌われている)
そして完成したのが「宝塚大人形館 世界はひとつ」です。

ここからは個人的な話になります。
ワタシが幼少の頃、ま、1970年代の話ですが、まだ日本にはイッツアスモールワールドなんてない、どころか存在することすら知らないわけです。
しかし神戸で生まれ育ったワタシにとって、宝塚ファミリーランドは馴染みの場所であり、当然「世界はひとつ」も何度も乗りました。

ここらへんは微妙なのですが、「小学生」の「男の子」が乗って、そこまで面白いものではないはずなんです。少なくともジェットコースターのような刺激的なアトラクションではないわけだし。
しかも、しつこく書いているように、ワタシは基本的に海外にたいしてまったく興味がない人間でした。それは小学生の時からです。
なのに、不思議と、つまらない、と感じたことはなかった。何ともいえぬ、余韻があった。
思えばあれが、(動く)人形とジオラマとの本格的な出会いだったんです。

宝塚ファミリーランドはとっくの昔に廃園になり、もう「世界はひとつ」というアトラクションに行くことは不可能です。
が、数年前のある機会に、レコード化された「世界にひとつ」を聴くことができた。
たしかに曲調は名曲「イッツアスモールワールド」にかなり似せて作ってあります。が「イッツアスモールワールド」に行ったのは大人になってからなので、別に郷愁はない。

ところが「世界はひとつ」は違います。子供の頃の思い出がどんどん蘇る。レコードなのに、歌い踊る人形の姿まで脳裏に浮かんでくる。さらにはロンドンに滞在していた時に知り合った世界中の友人たちの顔も浮かぶ。
もう、泣けて泣けて、しょうがなかった。極端にいえば、この曲に今のワタシのすべてがつまってる、といっても過言じゃない。

「世界はひとつ」は、もしかしたら「イッツアスモールワールド」の劣化コピーかもしれない。でもそんなことは関係ない。ワタシの人生を潜在的に方向づけたのは「イッツアスモールワールド」ではなく「世界はひとつ」なんだから。
この感動を、何とかGumi-chan1961で表現したい。そうずっと思っています。アトラクションとは違うかもしれないけど、何らかの形で、近い将来に、良い形でお披露目できればな、と。