~これでも仕事用です~

懐かしい、を懐かしむ2

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2016年、つまり今現在から「1980年代から見た1960年代」を見る、という、こうやって書けば、何だかとても複雑なことをしているように見えますが、ま、実はたいして複雑というほどでもないという。
上記を読んで「???ナンノコッチャ???」と思われる方は初回をどうぞ。
今回はその第二回です。

『携帯もテレビもパソコンもなかったのに、 どうしてあんなに楽しかったのだろう。』

いうまでもなく「ALWAYS 三丁目の夕日」のキャッチコピーです。
実に上手い惹句で、幾多の引用・改変が行われたくらい、代表的な昭和30年代的フレーズとさえなりました。

ひとつ残念なことを挙げるなら、2000年代のレトロブームは、この惹句にすべて集約されてしまったことです。
もっとわかりやすく書くなら「今より不便だけど、今はなくなってしまったモノがある」という捉え方です。(モノ=心の豊かさなど)
これではあまりにも、この時代の一面しか捉えられない。もちろん映画にも惹句にも罪はないのですが。

一方、1980年代のレトロブームです。
すでに30年ほど前の話なので一応補足しておくと、テレビはもちろん、携帯もパソコンも、なくはなかった(そんなことをいえば「ALWAYS 三丁目の夕日」の頃さえテレビはあったんだけど)。とはいえ今のように生活に入り込んだモノではありませんでした。
ま、要は、携帯もパソコンも一部の人だけが使うものであり、少なくとも惹句としては成立しない。
しかし逆に言えば、不便さの代用として心の豊かさが、などというお題目がない分、より自由で、より実質的な中身が重要だったともいえるのです。

例を挙げるなら
・大多数とまではいかなくても、かなりの人たちにとって共通体験となっているもの
・当時から素晴らしく、今(1980年代)もなお時代を超えて素晴らしいもの
・当時はマイナーだったが、あらためて見ると素晴らしいもの

考えてみると当たり前なのですが、重要なのは常に「いつ作られたか」ではなく「どんなものが作られた」であるはずです。
ところが2000年代版レトロブームは、針が精神的な方向に振れてしまって、過去の人物や作品への再評価まで結びつかなかった。それが本当に惜しい。
1980年代版レトロブームはもっと単純です。しかもそれほど離れた過去ではないため、事象にたいして人々の記憶も鮮明で、結果的には2000年代版よりも突っ込んだ考察が多かったのです。

前回「1980年代後半に、1960年代をテーマにした書籍や雑誌がいっぱい発売された」みたいなことを書きましたが、それらの本をめくるだけでも、意外とツボを押さえたものが多い。
特に、網羅的であるがばっかりに個々の情報が薄くなりがちな「1960年代大百科」のようなムック本でさえ、2000年代に発売された同種の本よりはるかに充実しているのです。
これだけネットが発達して、人々が簡単に情報を取り出せる時代の本の方が内容が薄い、というのは皮肉な話です。

さて、ワタシの手元には、この当時発売された大百科的な書籍がいくつかありますが、これらを軽く紹介していきます。

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1970年大百科JICC出版局(現・宝島社))
おいおい、いきなり1970年代じゃないかよ、と思われるでしょうが、このムック本はいわゆる「○○年代大百科」の先駆けになったもので、比較的早い1985年に発行されています。
先駆の宿命か、「1970年」と銘打ちながら1960年代の事象を相当含んでいるなど、整理しきれてない部分は多々ありますが、ごった煮編集が逆に強烈なエネルギーになっており、今見ても実に面白いです。

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1960年大百科JICC出版局
上記の1960年代版。
発行は意外に遅く1991年。サイズも小型化され同時に「1980年大百科」も発売されました。(まだ1980年代が終わって2年も経ってないのに)
時代がズレたこともあるでしょうが、「1970年大百科」よりはずっと洗練された出来に仕上がっています。

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196Xレトロ大百科ミリオン出版
ミリオン出版、と聞いて、もしかしたらあまり良くないイメージが浮かぶ方がおられるかもしれませんが、このムック本はかなりちゃんとしています。
発売は1987年。ま、もろブームに便乗した形ですが、カラーページも多く、コラムもしっかりしたもので楽しめます。紙質は悪いけどね。
とはいえ裏表紙が三億円事件の有名なモンタージュ写真を加工したものになってるのは、らしいっちゃらしいんだけど。

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昭和30年代のTVガイド(ごま書房)
ここまで紹介したムック本とは違い、これは新書として発売されたものです。
しかも発売が1983年と、厳密にはレトロブームより前に出たものなので便乗要素は一切ありません。
ターゲットをテレビ番組に絞り、昭和30年代のテレビ欄をまるまる再現した構成が面白い。
編集は週刊TVガイド編集部が直々に手がけており、かなりちゃんとした内容になってますが、ひとつだけ留意すべきは、実は週刊TVガイドの創刊は1962年なのですね。つまり昭和30年代のTVガイドの復刻ではなく、この本のためにあらたに作られた(というか再現された)テレビ欄なのです。

今回はここまで。