~これでも仕事用です~

ひつじ!ひつじ!ひつじ!

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ワタシは「ステマ」って言葉が嫌いでね。というか、まァ、ネットに限った話でしょうが、何でもかんでもステマステマいいすぎでしょ。あからさまに宣伝と謳ったものまでステマ扱いだし。
そのうちコマーシャルまでステマといわれかねん勢いですな、まったくこりゃ。

宣伝映画というのは昔からありました。別に映画に限らず、今では一般に浸透しすぎて気づかないのですが、たとえば「ちゃっきり節」も実は宣伝ソングです。
もう単に民謡として認識されているような感じですが、作られたのは1927年。つまり昭和に入ってからのものなんですね。

「ちゃっきり節」に刺激され、様々な企業が民謡風の宣伝ソングを作りましたが、現在、これらのものは伝承歌としての民謡と峻別するため「新民謡」と呼ばれています。
宣伝ソングではないものの、「東京音頭」(♪ 踊り踊るなぁら〜ってやつね)も代表的な新民謡です。

映画でいえば「モダニズム映画鑑賞記」のカテゴリで取り上げた「音楽喜劇 ほろよひ人生」「純情の都」も、どちらも宣伝映画の要素が強い作品で、劇中に大日本麦酒明治製菓のポスターが堂々と映っています。

こういう宣伝映画は1960年代までは結構作られていて、今回紹介する作品も1961年に作られたものです。
タイトルは「恋の羊が海いっぱい」。あんまり大きな声じゃいえませんが、某YouTubeで見ることができます。

宣伝映画、なんていうと、商品の紹介を延々しているようなイメージですが、むしろコマーシャル性は薄いのです。商品の紹介を延々やる映画なんて誰も見ないんだから当然なんですが。
しかもこの「恋の羊が海いっぱい」はミュージカル仕立てになっている。20分ほどの短編映画なのでストーリーらしきストーリーは存在せず、全編ミュージカル仕立てで見せていくわけです。

スポンサーとなったのは羊毛振興会。つまりはウールという生地を売らんかな、というための映画なので、ひつじの毛を刈って、それが織られてウール地が出来るまでを、モダンな音楽とダンスで表現しています。

全体の雰囲気は同年から放送が開始される「シャボン玉ホリデー」に似ており、しかし「シャボン玉ホリデー」よりもうひとつシャープでアバンギャルドです。
主演というか劇中で歌うのはペギー葉山。妥当なキャスティングで、華をもたらしています。

劇中、市川崑を思わせる早口の会話劇のシーンがあったり(久里千春水垣洋子のような「甲高い声の人」ばかりを出して、個性的なシーンであるにもかかわらず、キャストの個性は抑えているのが良い)、カットバックで牧場と都会の光景を見せたり、面白い演出がいっぱいあります。
監督は、後に「竜馬暗殺」を撮った黒木和雄ですが、すでに才気が見られます。

さてさて、ひつじつながりで、もう一本紹介したいのですが、これは映画ではなくレコードです。しかも正規に(つまりレコード店などに)出回ったものではなく、いわゆる宣伝盤なのですが、さらにヘンなのは音楽のレコードではないのです。
出演者はハナ肇クレイジーキャッツ、となると植木等が歌ってそうなものだけど、これはコントです。

このレコードのスポンサーは日本ウール宣伝協会なので、やっぱり「ひつじ」というかウールがテーマになっています。
純粋にコントとして聴くと、実にたわいない内容ですが、たいしたオチでもないのに馬鹿笑いをして終わる、というのは、いかにもクレージーらしい。

それにしても、映画といいレコード(正確には1960年製作)といい、この「推し」は何なんでしょ。
どちらもウール関係の団体ながらメーカーではないし、羊毛振興会と日本ウール宣伝協会が関連団体なのかもわからない。
レコードはともかく映画はそれなりにカネをかけて作られたはずで、とにかく「1960年代はウール地の時代にする」という意気込みは伝わってきます。

そういや日本テレビで放送されていた「野球教室」のスポンサーだった御幸毛織の(♪ ミユキー ミユキー ミーユキ ミユキー)で山のようなひつじが出てくるCMも、たしか初版はこの当時だったはずですし。
ま、今の目から見れば、ウール地推しというよりは、異様なひつじ推し時代に見えてしまうわけでして。

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