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~これでも仕事用です~

グミちゃんin藤沢

Gumi-chan1961関連

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今まで何度か個展らしきことをさせていただきましたが、実はたった一度、ほとんど告知をせずに行った個展があります。

2007年、カズミ・アカオは長年住み慣れた関西から、人生初の関東地方に移住する決心をします。
とはいえ初めての関東です。どこに住めばいいのか皆目見当がつかない。
東京の家賃が高いのはわかりきった話だし、では周辺の、神奈川、千葉、埼玉といった地域はイメージすら掴めない有様でした。

もし、東京以外の関東に住むのであれば、となったら、たったひとつだけ候補があったといいます。それが鎌倉です。
何故鎌倉なのかですが、これはカズミ・アカオが小津安二郎作品のファンだったからで、小津作品の世界に近い場所なら、と考えていたそうです。

ところが実際に鎌倉に訪れてみると、どうもイメージが違ったらしい。どこがどう違ったかはわからないのですが、とにかくピンとこなかった、と。
だいぶ後になって、本当に鎌倉に住むことになりますが、やはり住む場所ではなかったといいます。
とにかく人が多いからね、あの辺は。

しかし、せっかく鎌倉まで下見に来たのだから、という理由で江ノ島にも行ってみることにした。
これはワタシが20年ほど前に辻堂に住んでいたことがあり、いいところだから一度行ってみたら?と事前に伝えておいたからです。
で、江ノ島に着くなり、もうまったく違う感覚に襲われたらしい。ああ、ここなら、住んでみたい、と。

たしかにカズミ・アカオの出身地である福井県小浜市と、江ノ島近辺は似た雰囲気があります。
もしかしたら江ノ島という場所は勘違いされやすいのかもしれませんが(カズミ・アカオも実際に訪れるまで同様の勘違いをしていたらしい)、けして若者だけの場所ではないのです。

江ノ島内の参道もですが、江ノ電江ノ島駅を降りて江ノ島まで続く「すばな通り」は古き良き、おっとりした観光地の風情を残しており、正直、鎌倉の小町通りよりもずっと観光地気分を味わえる場所です。

すばな通りでひと際目を惹く建物があります。
玉屋本店という羊羹屋さんで、明治時代に建てられた威風堂々とした和風建築が実に素晴らしいのですが、昭和の遺物といえる建物や商店がいくつもあって、スマートボール屋、なんて聞くと、え?まだそんな店があるの?と懐かしく思われる方もおられるでしょうね。

さて、念願叶い、カズミ・アカオは江ノ島からほど近い場所に引っ越しました。住所でいえば神奈川県藤沢市になります。
とてもこの街を気に入ったカズミ・アカオは、何か恩返しができないか、と考えるようになります。
カズミ・アカオが恩返しするとなると、これはもうグミちゃんを見てもらうしかありません。
そうはいっても、なかなか良いギャラリーが見つからない。
そんな時、ふと思い出したのが玉屋羊羹なのです。

玉屋羊羹の隣に、羊羹屋とは正反対の今風の洋風建築があり、ここがギャラリーになっています。
あそこならグミちゃんの世界とも合う、そう直感したといいます。
はたして2007年の12月、実にひっそりと個展を開催しました。
タイトルは季節に合わせて「昭和36年のメリークリスマス」。

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とはいえ、この個展はあくまで藤沢の人たちに見て欲しい、そのための個展なんだ、という強い信念がありました。
だからDMを送ったりすることも一切なかった。
唯一告知らしい告知といえば、江ノ電藤沢駅にポスターを掲示してもらったくらいです。
すばな通りを行き交う人にさえ、たとえ外からでも見てもらえれば良い、そう考えていたそうです。

何しろ12月なので観光客もまばらで、地元の人がほとんどだったのですが、予想外にこの個展は盛況でした。
足を止めるだけではなく、ギャラリーの中まで入ってきてくれて、鈴なり状態になったのです。

その時、皆が口々にこういったそうです。
「この商店街は、昔のすばな通りをモデルにしたの?」と。
もちろんグミちゃんの商店街のモデルは福井県小浜市です。というか作っている時点では、すばな通りの存在すら知らなかったくらいです。
だから、当然否定するんだけど、訝しげな表情をされる方が多くおられたそうです。
「だって、あまりに昔のこの辺りに、似てるから」

この話は、以後の示唆になりました。
こだわって作れば作るほど、逆に普遍的になるんじゃないかと。
Gumi-chan1961は1961年の世界をモデルにしてますが、何もそこまで、というくらい、徹底的に細部まで調べ上げた上で製作しています。
しかし、だからこそ、誰が見ても「まるで自分が子供の頃の、うちの街の商店街をモデルにしたよう」と思ってもらえるんだなと。

余談ですが、この個展の時は芳名帳を置いていたのですが、実に意外な方に来ていただいたことがわかりました。
具体的な名前は書きませんが、黒澤明作品、岡本喜八作品、クレージーキャッツ映画など、1960年代の東宝映画で活躍した、そして特撮ファンにも馴染み深い、鎌倉在住の「あの方」です。
と、ここまで書けば、鋭い方ならお判りいただけるんじゃないでしょうか。

とにかく、「恩返し」のつもりだったこの個展は非常に得るものが多かった。その結果、カズミ・アカオはますます藤沢が好きになり、今また藤沢に住居を構えています。
また、いつか、藤沢の人にグミちゃんを見てもらいたいなぁ、それはカズミ・アカオの口癖にすらなっているくらいですから。

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