~これでも仕事用です~

看板は時代の鏡

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今回はこのブログの根本的な疑問にお答えしようと思います。

我々の作品「Gumi-chan1961」は1961年を舞台にしています。なのに何故ワタシが1961年から20年以上も前の戦前期に拘るのか。
答えは3つあります。ひとつは以前書かせていただいた通り、戦前モダニズム期に影響を受けた人が1960年代にモノづくりをしていたからで、そこまで思いを馳せないと、結局はニセモノの1960年代になってしまうと思ったからです。

さらにキャラクターの年齢です。
グミちゃんのお父さんは1921年生まれという設定です。つまり大正末期の生まれ。人格を形成する多感な時期が、昭和の初めから終戦まで、ということになります。
これは極めて重要です。グミちゃんのお父さんであるトミオがどういう時代に生きた人なのか、その時代背景を無視すると、青田トミオというひとりの登場人物ではなく、単に「グミちゃんのお父さん」というキャラになってしまう。

ワタシがそれが嫌だった。ちゃんとバックボーンがあって人物が形成され、くすの木町という小さな街で自転車屋を営み、数ある「持ち場」のひとつとしてグミちゃんの父親というものがある、という風にしたかった。
さすがに全部のキャラクターをここまで詳細に決めているわけじゃないけど、それでも年齢さえ決めれば、そして時代背景さえ完璧に把握していれば、何となくどういった人生を歩んできたのかは、イメージできます。

そのために重要だと思ったのが戦前モダニズム、特に芸能における戦前モダニズムです。
トミオや、くすの木町の大人が青春期を過ごした時代で、もっとも気楽な娯楽だったのが映画だったはずで、それも出来るだけ肩のこらない娯楽映画。
テレビは時代を映す鏡と言いますが映画もそうで、まったく時代と関係ない映画など存在するわけがない。

そりゃ、辛気臭い映画だって、それなりに客は入ってたんだろうけど、やっぱりね、純娯楽映画。
ワタシの個人的趣味で当ブログではモダンな音楽喜劇に比重を置いてますが、もうひとつチャンバラ映画も外せない。
ま、チャンバラ映画についてはいずれ書きます。あまり熱心な書き方ではなくなると思うけど。

最後。これまた非常に重要なことなのですが、少なくとも戦前期を知っていないと1960年代の光景は描けない理由があるのです。

長々と説明します。
1945年の大空襲によって都市部、とくに東京や大阪の街中は灰になってしまいました。
これはアメリカ軍が木造家屋が多い日本に対応するため、「爆撃」ではなく、焼夷弾なる「火災を発生させて街を焼き尽くす」爆弾を使用したからです。
しかし日本中のすべての街が焼き払われたわけではなく、グミちゃんの生まれたような小都市は戦後になっても戦前の風景を留めることになります。

もちろん再開発によって、また老朽化などの理由による新築も増えますが、1961年時点では戦前期以前の建築物が姿を消した、なんてことはあり得ず、まだ相当数が現存していました。
建物もそのままなら看板なども戦前期からそのまま、というような商店も多く、かすかにとはいえ戦前期の空気感は残っていたのです。

ここで、ものすごく当たり前な、しかし昭和の光景を作っていらっしゃる方々が見落としがちなことを書いておきます。
アドバタイズメント、つまり広告ですね。広告こそ完全なる「時代を映す鏡」なのですが、レイアウトや構成だけではなく、使われている文字のデザインにも流行り廃りがあります。

たとえば昭和初期の広告。異様なほど太字でデザインチックです。
これがワタシが戦前モダニズムの時代と定義付ける1930年代に入ると、もう少しバラエティに富んでいきます。
戦後はまたまた雰囲気が変わります。太字斜体で文字だけ見ていてもエネルギッシュな時代だというのが伝わってきます。
広告だけではない。これは店の看板もそうなんですね。
看板も作られた時代の流行りを取り入れている。というか無理に流れに逆らっていないというか。

それを踏まえれば、1961年の街並みは、というか商店の看板は1920年代から60年くらいまでの流行りのごった煮だったはずなんです。
これは今でも同じでしょう。さすがに戦前の頃の看板はほとんどみかけないにしても、1980年代くらいに作られた看板なんか、どこの街でも嫌というほど見つけられます。

ワタシはそーゆーのをちゃんとしたいんです。ま、前職がグラフィックデザイナーだったってのもあるんだけど。
この店の創業はだいたい○○年くらいだから、当然店舗の形はこう、となると文字デザインはこう、みたいに。

店舗の形まではこだわっておられる方は結構いますが、さすがに文字デザインまで、となると難しいみたいで。
でも、物凄くもったいなく見えるんですよ。すごい精巧に作られたジオラマなのに、看板の文字が勘亭流だったりしたらね。

たしかに市販のフォントで、それっぽいのはないのですが、それならせめて明朝体を使って欲しいと思う。勘亭流なんか使ったら一気に「昭和の光景」ではなく「昭和風テーマパークの光景」になるんだから。
難しいのはわかるのですがね。なんならワタシに一声かけてくださいな。マジで。

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