~これでも仕事用です~

イギリスのミニチュア事情

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今年の夏でしたか、松屋銀座でおこなわれた「ひつじのショーン展」を見に行ったことがあります。
これは実に素晴らしかった。ミニチュアやクレイドールアニメーションに興味がある人はもちろん、小さな子供でも楽しめるように工夫されているのが何より良かったわけでして。

ひつじのショーン」、そして「ウォレスとグルミット」を作ったのはアードマン・アニメーションズという会社です。
クレイアニメーションという、実に実に手間暇がかかる製作を、簡略化するわけでもなく、そして人海戦術で仕上げるのでもなく、少ない、しかし優秀なスタッフによる丹念な工程にはつくづく頭が下がります。

劇中で使われるジオラマも本当に良く出来ている。デフォルメが上手く、背景を見てるだけでも楽しい、けど「やりすぎ」てはいない、といつ絶妙のラインをついている。
この「凝り方」と「デフォルメ」のバランスは、簡単に真似できるわけじゃないけど真似したい、と思わせてくれるのです。

そんなアードマン・アニメーションズはイギリスの会社です。
イギリスといえばドールハウス発祥の地ですし、世界初のプラモデルの量産もイギリスでした。
となると当然、ミニチュア全般のレベルが高い、と思われるかもしれません。
しかし、まァ、正直いえばアードマン・アニメーションズが例外なだけでして・・・。

さて、ロンドンはベスナル・グリーン駅の近くに「V&A子供博物館」という施設があります。
もともとは普通の博物館だったそうですが、途中から子供の遊具専門の博物館に生まれ変わりました。(Wikipediaによると子供専門になったのは1974年かららしい)

博物館、なんていうから、ものすごく古いものばかり展示してありそうですが、実際はそんなことはなく、たとえばコンピューターゲーム機なんかも展示してあったりします。ワタシはそーゆーのも好きなので、1980年代にイギリスしか販売されなかったマシンとか初めて見て、ちょっと感動したりしました。

で、当然のようにドールハウスも置いてあります。それもかなりの数。スペース的にも余裕があるので、かなり大スケールのドールハウスもある。
たしかにこのスケールとなると、日本の家庭に置くのは難しいでしょう。そういうのはね、本当、イギリスならでは、だとは思うんです。

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しかしご覧のように、クオリティ的には正直日本で作られているドールハウス作家さんの作品に、はるかに及ばない。
もうぶっちゃけていうなら、ぜんぜん大したことがない、まァ、かなり大味なものでした。
博物館ですらこの程度です。一応ハロッズとかにもドールハウスコーナーはあるけど、似たり寄ったりで、少なくともドールハウスの勉強のためにイギリスまで行く必要はまったくありません。

でもこれは当たり前なのですよ。
向こうのドールハウスは、あくまで「子供の遊び道具」なのです。いわばリカちゃんハウスなんかと同じカテゴリで、リカちゃんハウスよりも精巧じゃないけど、とにかくデカい。三階建て四階建ては当たり前の世界です。
日本のドールハウスが「大人が鑑賞するためのもの」として発展してきたのとは間逆の方向性なんですね。

逆にいえば、大人の鑑賞に耐えうるドールハウスやジオラマは極めて少ない。ジオラマなんか本当にあまりなくて、お、ジオラマ?と思ったらタクティカルゲーム、ま、ボードゲームの一種だったりする。
タクティカルゲームは愛好者が多くて、これはこれで発展していて面白いんだけど、どっちにしろ鑑賞用ではなく、遊ぶためのものです。

別にアンケートを取ったわけじゃないから正確なところはわからないけど、趣味でドールハウスやジオラマを作っている人も日本よりかなり少ないはずです。
実際、ミニチュアやジオラマを作るための材料や工具を売ってる店もほとんどないし。模型屋はいうに及ばず、画材屋や手芸屋、ホームセンターの類いにも制作に役立ちそうな材料なんか置いてないしね。
ホント、イギリスの愛好者の人たちはどこで材料を買ってるんだろうか?

実態としてはこんな感じなのですが、だからこそワタシはアードマン・アニメーションズは凄いと思うんです。
ミニチュア専門の材料も道具もない中で、しかもやってる人も少ない中で、ちゃんと優秀な人材を育成して、すこぶるクオリティの高い作品を何本も仕上げている。

ウォレスとグルミット」にしろ「ひつじのショーン」にしろ、話として面白い云々以前に、なんか楽しいんですよ。作ってる人が楽しみながら作ってるのが見える、というか。
あんだけ手間暇かかることをやってて、なおかつ楽しめるって。凄いなぁ。心から尊敬しますよ。

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