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~これでも仕事用です~

グミちゃんin福岡

Gumi-chan1961関連

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これまで何度か個展のことを書いてきましたが、今回は個人的にちょっと悔いの残る個展の話を書きます。

2006年10月、大阪の朝日新聞本社内アサコムホールにて、カズミ・アカオ初の本格個展「上を向いて歩こ♪」を開催したのですが、ほとんど時間を置かず次の個展を開催しています。
展示内容はアサコムホールの時とほぼ同じ。ただ場所を九州は福岡でおこなったのです。

福岡で開催したのには理由があります。
グミちゃんの撮影をお願いしている、カメラマンの田中紀彦氏が福岡に居住しているからで、ワタシどもとしても遠く離れた場所で開催してみたい、という希望を持っていましたし。
それに福岡の人々に見てもらうというのは、ひとつの試金石になる、とも考えていました。

最近はどうかは知りませんが、「新商品のテスト販売」をまず福岡から、というパターンが非常に多いのです。
ワタシはマーケティングに詳しいわけでないので、何故福岡なのか、はわからないのですが、とにかくまず福岡でテスト販売して売れたら全国的にも売れる、ダメなら全国販売しても失敗する、みたいなデータがあったような気がします。

とにかく福岡の人々にグミちゃんという作品が受け入れられたら、全国のどこに出しても恥ずかしくない、というか、全国的にウケるんじゃないか、とはずっと思ってたんですね。

正直開催場所、というか会場探しは難航しました。
グミちゃんという作品に適した会場がなかなか見つからず、ここいいんじゃないか、と思ったところには断られる、の連続で、最終的に決定したのは青山ブックセンター福岡店のギャラリーでした。

青山ブックセンターはワタシも馴染み深い店で、といってもワタシが通い詰めたのは六本木の店舗ですが、それが福岡にもあったのです。
そこの、何階かは忘れましたが最上階に、実に良い感じのギャラリーがあり、ここならグミちゃんの世界観が表現できる、と。
残念ながら書店もギャラリーも現存しませんが。

さて、大阪の個展は大成功でしたが、これも軽い悔いはありました。
せっかく1960年代の世界を人形とミニチュアで表現しながら、当時の空気感がイマイチ表現できなかった。
ま、はっきりいえば、照明の話です。

アサコムホールというのはギャラリーではなく、いわゆるイベント会場です。当然精細に照明をあてる、などはできるわけがなく、昼間は太陽光が降り注ぎ、夕方からは天井の蛍光灯で作品を見せるしかなかったのです。
これではね、やっぱ、どうにも1960年代っぽい雰囲気にならないのです。

青山ブックセンターのギャラリーは、大きな窓こそあるものの暗幕で覆っても構わないという。しかもスポット照明も完備されている。
これなら、如何にもな1960年代的な、夕方っぽい感じにできるぞ、と。
だから唯一の変更点として、ジオラマのバックに空の絵を掲げたのです。

実際やってみると、本当に夕方っぽい感じになる。これはグミちゃんの展示の決定版になるな、とほくそ笑んでいました。
その写真を見ていただきた・・・いのですが、何故かこの時の個展の写真がまったくない。大阪の時のもほとんど残ってないんだけど、こっちはさらにないのです。
かろうじて残っていた一枚を載せておきます。

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田中紀彦カメラマンの居住地ということもあり、大阪の時よりも写真パネルを圧倒的に増やし、なかば「二人展」のようにした。これも写真がないんだけど、良い感じに仕上がりました。

が・・・、これは失敗でした。
いや、写真パネルの方は良かったんです。問題はジオラマの方です。
暗幕を引いてギャラリー全体を暗くする。そして人形とジオラマにスポット照明をあてる。これ自体は良かった。たしかに雰囲気は抜群です。
でも、会場自体が異様に薄暗くなってしまった。ちなみに先に貼った画像は明るくして撮ったものです。

もしデパートなんかの大きな会場なら、一部を暗くして、みたいなのことは可能でしょうし、ぜんぜんアリでしょう。
しかし会場全体が暗いと、作品自体の雰囲気も暗くなってしまうのです。

苦情もあり、途中から会場を明るくしたのですが、そうなると作品が死んでしまう。大阪の時と違って会場が狭く、ジオラマが死んでしまったら他に見所がなくなってしまったんです。
福岡の人々に見てもらうことが試金石になる、と思っての開催でしたが、見せ方を失敗したためそれ以前の話になってしまったのです。

この時の反省はかなり後まで尾を引きました。
かといって、ではどうすれば良いのか、という答えもない。ジオラマのスペースだけを覆って、なんてのも無理すぎる。何しろ3m以上あるから。
その後は、以前書いた江ノ島近くの玉屋羊羹のギャラリー以外では個展を行いませんでしたので、答えが出ないまま、時間が過ぎていきました。

しかしロンドンに行った時に、ふと発想の転換を思いつきます。
だいたい、典型的な1960年代的世界を避けるべく作品を作っているのに、照明だけは典型的な夕方の光景にこだわっていること自体がおかしかったのです。

それからは見せ方をガラリと変えました。
太陽光でも蛍光灯での照明でも関係ない、というかむしろ活きるような感じにしていこう、と。
田中カメラマンにも、それから注文を変えました。如何にもな夕方っぽい感じは止めて欲しい、とにかく明るくポップな感じにして欲しい、と。
実際に発想の転換前と転換後の写真を見ていただければ一目瞭然です。

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(前)

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(後)

ロンドンのポール・スミスでのエキシビションは、太陽光すら入らない、完全に蛍光灯だけの照明でしたが、そういうことを意識して人形もジオラマも作ったためか違和感のない雰囲気になりました。

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福岡の個展自体は、完全に失敗と言えないまでも(たくさんの人に来ていただきましたし、実際に見に来られた方の評判も上々でした)、多くの課題が残る結果になってしまいました。
しかしこの時の「悔い」かきっかけで、作品そのものだけではなく、見せ方にまで思いを馳せることができた。いわばとんでもない大きな収穫を得るきっかけになった、と考えれば、やはり成功だったのではないか、と思うのです。

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