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~これでも仕事用です~

サンキュー・ティム

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もし、この世にこの人が存在しなければ今の自分はない(無論ポジティブな方面で)、という人は、誰しもひとりは必ずいると思います。
そんなに頻繁に会うわけではない、だけれども、人生において欠かせない人・・・、もしかしたらワタシたちにとってそれがティムなのではないかと思っているのです。
え?ティムって?それはおいおい。

思えば、グミちゃんのロンドンへの売り込みは相当無茶苦茶でした。
何のアテもなく、いや、それどころか、ロンドン行きを決めた時点では、グミちゃんを売り込むつもりですらなかったのです。
2012年の初め、カズミ・アカオはロンドンへと旅立ちます。
これから海外で活動するぞ、というようなポジティブなものではなく、悲壮感を全身に漂わせたロンドン行きでした。

何度か書きましたが、グミちゃんは日本ではまるで認められず、人形作家としてのカズミ・アカオは完全に行き詰まっていました。
もう、無理かも、しれない。でもこれで終わることはできない。大仰かもしれないけど、このまま終わったんじゃ死んでも死に切れない。
それでは最後に、アートの都であるロンドンで売り込んでみよう。それで、もしダメなら、スッパリ諦める・・・。

実はこの頃、カズミ・アカオは一切人形を作っていませんでした。どうしても人形が認められないというジレンマから絵を描いていたのです。
上手いか下手かはともかく、全身全霊をかけて描いていたことは事実です。でも、やっぱり人形同様認められなかった。
ちなみにその頃にカズミ・アカオが描いていた絵を貼っておきます。

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はがいちようさんには、いまだに「あのアカオちゃんの絵、好きなんだけどなぁ」と言っていただけるのですが、それでも認められなかった事実は変えようがない。
でも、もしかしたら、はがさんのように認めてくれる人がロンドンにいるかも、ただそれだけを信じてロンドンはヒースロー空港に降り立ったのです。

ロンドンに着いたものの、アテがないんだから何をどうすればいいのかわからない。
ただ、たったひとり、アポイントメントをとった人がいました。
その人の名前は伏せますが、在英の日本人アーティストの方で、とにかくこの人にだけでも認めてもらう、と勇んでその方のアトリエまで出向いたのです。

しかし、その方の放った言葉は、カズミ・アカオにとっては残酷なものでした。
「申し訳ないけど、無理だと思います」
・・・そうか、だいたい日本で無理なものがロンドンで認められるわけがない・・・。
しかし続いて発せられた言葉は意外なものでした。
「絵は無理だけど、何で人形を売り込まないんですか?グミちゃん、とっても可愛いのに。あれならイケますよ」

もう一度繰り返します。カズミ・アカオはあくまで「絵」の売り込みにロンドンに来たのです。しかし、その方が認めてくれたのは、とっくに諦めたはずのグミちゃんだった。
グミちゃんを売り込むつもりは皆無でしたが、それでも「旅のお供」としてグミちゃんを持っていってた。
そうか、グミちゃん、か・・・。
よし、ここまで来たんだから、グミちゃんを売り込んでみよう!

ここからはややこしい問題があるので詳細は割愛しますが、とにかくロンドンでビジネスをされているイギリス人女性(仮にCとします)と会えることになった。
Cさんは日本に留学経験があり、日本語がペラペラ。しかもイギリスでバリバリビジネスをされている、という非常に心強い人でした。ちなみに今でも世話になっています。

そのCさんに実際お会いすることになったのですが、もうひとり男性を連れてきた。
彼女いわく
「私はビジネスはわかるけど、アートはわからないので友人に来てもらった」
後ろから、いかにもシャイな感じの、長身の青年が現れた。
この青年こそティムで、ロンドン在住のイギリス人アーティストでした。

ティムはひと目グミちゃんを見るなり、これは素晴らしい!ぜひ売り込むべきだ!と絶賛してくれたのです。
こう書くとお世辞っぽいのですが、実はアートの審美眼にかんしてはシビアなことを後で知ることになります。
だから、この言葉は本心だったのです。

おそらくCさんは、ティムがお世辞をいうような人ではない人柄なのをよく知っていたのでしょう。
そのティムが絶賛するグミちゃん、これはもしかしたら、もしかする・・・。
「そういえば私の友人にポール・スミスで働いている人がいる」
Cさんのひと言で、初めてポール・スミスに繋がることになるのです。

その後のことは、まァ、いずれ書きますが、今回の主役であるティムの話を続けます。
ポール・スミスでのエキシビションが決まった後も、ティムはいつもグミちゃんのことを、そしてカズミ・アカオのことを気にかけてくれていました。
しかしワタシはなかなかティムに会う機会に恵まれせんでした。

ここまで、まるで見てきたように書いてるけど、すべてワタシはその場にはおらず、カズミ・アカオから聞いた話を文面にしただけです。
やっと同年冬のロンドン滞在中、ティム主催の誕生日パーティーに呼んでもらい、初めて会うことができました。
ま、仮装パーティーだったので、シャイかどうかどころか、素顔すらよくわからなかったのですが。

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↑ 初対面で相手が女装(もちろんティムにそういう「気」があるわけじゃない)ってのは、如何なもんでしょ。ま、パーティーだから。

今年の5月、ティムが日本に遊びにきました。
空港までクルマで迎えに行き、ホテルまで送っていったのですが、たぶん齢40ン年の中で一番緊張する運転になってしまいました。
ティム、そしてティムの彼女は初めての日本です。絶対に日本にたいして良い印象を持って欲しい、だからクルマでの移動中に少しでも怖い目にあわせるわけにはいかない・・・。
んなことを考えすぎたせいで、ガチガチになってしまったのです。

この日の夜は食事に行っただけでしたが、翌々日には、日本が誇る酔っ払いこと、巨匠はがいちようさんのアトリエまで行き、ふたりを引き合わせることができました。と、これまた見てたように書いてるけど、この日ワタシは不参加。そんなんばっか。

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↑ 若きイギリス人アーティストと日本の巨匠。ジャンルは違えど、そこはアーティスト同士。すぐに打ち解けたそうです。

彼は今、アートセラピーに取り組んでいます。アートにより人々の心を癒し、それがまたアートになる、という壮大なプロジェクトです。

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ティムならできる、と思えるのは、それは誰よりも神経が細やかで優しく、同時にアートにシビアな審美眼を持っているから。両方備えたティムなら、きっと成し遂げるはずです。

ワタシたちも、ずっとティムに見守られているような気がしている。イギリス人で最初にグミちゃんを認めてくれ、今もずっと応援してくれている。
でも、もし、グミちゃんがおかしな方向に行きそうになったら、ティムなら気づいてくれると思う。
だから、今までも「サンキュー」だけど、これからも「サンキュー」なのです。

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