~これでも仕事用です~

さよならブルーナ!

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先日、我が敬愛するディック・ブルーナが逝去されました。
追悼の意味で何か書こう、と思ったのですが、正直何を書いていいのかわからない。何しろワタシがブルーナを「グラフィックデザイナー」として意識したのが25年も前です。その間、ワタシの究極の目標はブルーナに少しでも近づきたい、でしたから、思いが強すぎて書きたいことが整理できないのです。

以前も書いたかもしれませんが、ワタシはGumi-chan1961にかかわるまでグラフィックデザイナーを生業としていました。
しかし始動は極めて遅かった。何しろ30歳になるかならないか、くらいの頃です。
それまでは自慢じゃないけど、グラフィックデザイナーになりたいなんて、いやグラフィックデザイナーという職種を意識したことすらなかったのです。

にもかかわらずブルーナは特別な存在でした。
何しろグラフィックデザインなんか興味がないのですから、その時点で本当のブルーナの凄さなんかわかるわけがない。でも、もし好きなデザイナーをひとり挙げろ、となれば、それはもうブルーナしかなかった。

ブルーナを初めて意識したのは、NHK教育の番組でした。
ディック・ブルーナといえばミッフィーですが、ずっと後年になってクレイアニメーション版のミッフィーNHK教育で放送されますが、それではない。

この頃(1990年代)に放送されていたミッフィーブルーナの絵本の絵をそのままアニメーションにしたようなもので、アニメーションといっても大々的に動くわけではなくFlashアニメみたいに絵が「スライドする」みたいな感じだったんです。
2006年に大阪で行った個展に、このイラストアニメ版ミッフィーを参考にして、グミちゃんのアニメを作った、みたいな話は以前に書きましたね。

しかしそんな番組のことも忘れた1990年代の終わり、アタシは偶然が重なりグラフィックデザインをやることになった。
が、何しろグラフィックデザイナーになんかなりたいともなれるとも思ってなかったわけで、当然何の勉強もしていない。だけれども「だからできません」と言えるような状況じゃなくなったのです。
こうなりゃ自分なりのデザイン手法を編み出すしかなかったのですが、そんな時、ふと頭に浮かんだのがディック・ブルーナだったんです。というかブルーナ以外グラフィックデザイナーなんか知らなかったし。

ま、一般にはブルーナといえば絵本作家です。果たして彼をグラフィックデザイナーといえるのかどうかもよくわからなかったのですが、学ぶとなったら一番好きなデザインから学びたい、という当然の心理から、本式にブルーナの研究をしてみたわけです。
すると、これはとんでもない人だ、というのが徐々にわかってきます。彼を絵本作家として捉えるというのは、あまりにも一面しか見てない、というのもわかってきたのです。

ディック・ブルーナは1927年オランダ生まれ。画家を志しますが挫折し、父親が経営する出版社に入社します。
そこでブルーナが任されたのがジョルジュ・シムノンなどのミステリ小説の装丁(本のカバーデザイン)でした。
「ブラックベア」と題されたシリーズはシンプルかつシックでインパクトの強いデザインで話題になりますが、一部をご覧ください。

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ひと言でいえば「カッコいい!」としか言いようがありません。
無駄をすべて削ぎ落としたデザインは、ある意味「究極のデザイン」といってもよく、当時のワタシは度肝を抜かされたのです。

その後ブルーナは、ご存知のようにミッフィーをはじめとする絵本を手がけるのですが、ここでも取り除けるものは全部取り除いた素晴らしいデザインは変わりませんでした。
ブルーナといえば「ブルーナカラー」ですが、赤、青、白、緑色、黄色、灰色、茶色、といった、たった7色だけですべてを表現する、といった手法も「削って削って、最後にどうしても必要な色」としてこの7色が選ばれたのです。

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ミッフィーは絵本ですから、当然「おはなし」が付随するのですが、絵本であるにもかかわらず「死」を表現するなど、現実から目を逸らしていない。
どんなシーンでも常に正面を向いているミッフィーですが、ブルーナ自身も正面から現実を見ていたんです。

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だからその世界で表現されるのは、たしかにうさぎが擬人化されたキャラクターというファンタジーの世界だけど、展開されるのは「現実」そのものであり、かといってけして残酷な現実を見せるのではなく、子供であっても起こりうる現実の予行演習を絵本の中でさせてくれているのです。
子供だからこれは見てはいけない、これは見たくないかもしれないけど見ておかなきゃいけない、という「ライン」を絶妙にひける、それがブルーナなんです。

以前書いたように、ワタシはまったく海外に興味がない人間でした。
しかし、もし、どこの国に行きたいか、と聞かれたら「オランダ」と答えていた。オランダで何がしたい?と聞かれたら、もちろん、ブルーナに会いに行きたい、と。

グラフィックデザイナーの頃から、そして今はGumi-chan1961という作品を通しても、ずっと目標であり続けてくれたブルーナ
あなたに一度でいいからお会いしたかった。噓偽りのない本心です。
しかしもう、その夢は叶わない。
だけれども、今も、そしてこれからも、目標であることには何も変わりはないのです。

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